「関西電力は歴代総理に闇献金をしていた」と関電の元副社長が語ったことを朝日新聞が報じた。電力会社と政界の癒着はこれまでも報じられてきたが、当事者が暴露するのは異例のことだ。今回はこのことについて、京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに聞いた。(ラジオフォーラム)
◆日米原子力協定の改定時期に献金
ラジオフォーラム(以下R):関西電力の元副社長の内藤千百里(ちもり)さんが証言されて、歴代総理に2千万円もの闇献金をしていたという記事が出ました。この記事を読まれて、まずどういうふうにご感想を持たれましたか。
小出:この方は、「原子力発電所なんて、安全だとは一度も思ったことがなかった」と、ご自分でおっしゃり、そう 思いながらも政治家に金を渡して、原子力を進めてきた張本人のひとりだったわけです。それが福島第一原子力発電所の事故を目の当たりにして、やはり発言を しようと決意をしたということで、まっとうな方だと思います。
R:91歳にして、述べ69時間のインタビューに答えられています。そして、歴代総理の名前も挙げて、中曽根総理大臣、竹下総理大臣に献金をしたと話しています。この二人は、1987、88年頃の総理大臣なのですが、まさにこの時に、日米原子力協定が改定されていますね。
小出:そうですね。もともとは、55年に最初の日米原子力研究協定ができて、68年に改定されました。そして、20年経った88年に、現在発効している日米原子力協定が作られました。
◆日本は核武装できるのか。
R:その日米原子力協定の第5条に、「核燃料の再処理ができる」とあります。第6条には「日米政府はウランの濃 縮を20パーセントまで認める」とありまして、さらに、「日米が同意すれば20パーセント以上の濃縮も可能だ」というふうに書かれているのですが、これは 明らかに核兵器製造を意図した条項ではありませんか?
小出:そうです。もともとウランという物質は、地球上にあるわけですけれども、そのウランの中には、核分裂する能力を持ったウランと、核分裂する能力を持っていない、いわゆる役立たずのウランの2種類があります。
R:ウラン235とウラン238のことですね。
小出:そうです。核分裂する能力を持っているウラン235の方は、天然ウラン全体の0.7パーセントしかありま せん。ですから、天然ウランに火をつけることすら難しいということになります。現在、日本にある原子力発電所では、0.7パーセントのウラン235を4 パーセントあるいは5パーセントぐらいまで濃縮して、ようやくにして原子炉の中で燃やしているのです。
R:核分裂をするウラン235でも、ウラン濃縮工場で濃縮作業をしないと使えないということですね。
小出:そういうことです。ただし、もし原爆などを製造しようとするのであれば、4パーセント、5パーセントなどというものではダメです。核分裂性のウランが90%ぐらいは欲しいということで、もっともっと濃縮ということをやらなければいけません。
R:日本の濃縮工場では、何パーセントまで濃縮できるのでしょうか。
小出:濃縮工場というものを造ってしまえば、その運用というものはどうでもできます。4パーセント、5パーセントの濃縮工場を造ってしまえば、もちろん20パーセントの濃縮ウランを造ることも可能ですし、運用によっては90パーセントの濃縮ウランを造ることも可能なのです。
R:ということは、北朝鮮やイランから見ますと、日本はもうすでに20パーセント以上の濃縮を可能とする協定を結んでいるのに、なんで自分たちばかり責められるのだ、ということになりませんか?
小出:当然、そうです。ですから、イランはもともと、自分たちがやっているのは原子力の平和利用なのであって、 「自分の国で研究用の原子炉を動かすために20パーセントの濃縮ウランが必要だからやっているだけだ」とはじめから一貫してそう言っているのですね。それ は、いわゆる主権国家として当然の権利なのであって、誰からも妨害されるいわれはないと言っているわけで、私もその通りだと思います。
ただし、4パーセントであろうと20パーセントであろうと、濃縮ウランを作る能力を持ってしまえば、90パーセントの濃縮ウランを作ることも出来て しまう。そういう技術ですから、米国あるいはヨーロッパから見れば、イランという国にそんなものを持たせたくはないでしょう。そういう国際政治上の力学 で、今イランが非難されているわけです。日本は米国の属国なわけですから、米国としては「日本はまあいいよ」と言ってくれているのです。
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