◆核武装に必要なのは、アメリカの許可だけ
R:原子力協定第5条に「再処理ができる」とありますが、これは再処理をしてプルトニウムを取り出すことができるという意味ですね。
小出:おっしゃる通りです。原爆には2種類ありまして、広島に落とされた、ウランで造られていた原爆と、長崎に落とされた、プルトニウムという物質で造られていた原爆です。
日本はすでに、ウラン濃縮技術というものを懐に入れてしまっています。あとは、米国の同意さえあれば、広島型の原爆などいくらでもできてしまうという状態まで、今来ているわけです。
一方、長崎の原爆に必要なプルトニウムという物質を造ろうとすれば、まずは原子炉を動かして、自然界には全くないプルトニウムを造らなければいけな い。でも、作っただけでは原爆の材料にはなりませんので、原子炉の使用済み燃料の中からプルトニウムを取り出すという作業がどうしても必要になるのです。 それが再処理という技術なのであって、米国は他の国には絶対に再処理を認めないという政策で来ました。
R:そうですね。韓国にも認めませんものね。
小出:そうです。一切、他の国には認めない。いわゆる核兵器保有国5カ国だけはもういいのだと。それ以外の国に は再処理は認めないということでやってきたのですけれども、日本だけは「お前は子分だから、まあ認めてやるよ」、「原子力協定を結べよ」ということで、現 在まで来ているわけです。
R:つまり、第5条の「再処理ができる」は、「長崎型の原爆を作ってもいいよ」ということで、第6条の「20パーセント以上のウラン濃縮を認める」は、「広島型原爆を作ってもいいよ」ということを意味しているわけですね。
小出:そうです、米国としては、一応、原子力協定というものを結んで、日本というものを自分の属国として縛り付けておくということをやっているわけです。いざとなれば、それを解き放って日本を核兵器保有国にして、また中国なり何なりの防波堤に使おうと思っているのだと思います。
◆それでも責任をとらない人たち
R:核兵器を持ちたい政治家たちと、原子力で儲けたい電力会社。この両者の野合で癒着が進み、そして福島第一原発事故が起こったということでしょうか。
小出:はい、おっしゃる通りです。政治家はひたすら核兵器を作れる力を持ちたい。電力会社を含めて原子力に群 がった産業は、とにかく金儲けをしたい。この両者が集まって、とにかく原子力を推し進め、「少しぐらい危険でも、過疎地に押し付けておけばいいだろう」と いうことでやってきたわけです。けれども、残念ながら福島第一原子力発電所で、本当に恐れていた事故が起きてしまったのですね。
内藤さんご自身はそれで反省して、今のような証言をするようになっているわけですけれども、ほとんど誰一人として責任を取っていないわけです。
R:そうですね。
小出:もう世紀の大犯罪だと私は思いますし、責任者を必ず処罰したいと願います。
R:戦争でも責任を取らない、原発事故でも責任を取らない国だということですね。
小出: そういうことです。
資本主義経済の論理で原発のコストを計算をすれば、維持することはとうてい不可能だ。にもかかわらず、原発が日本でこれほど多く建設されてきたのは、政治 と密接に結びついてきたからにほかならない。政治家は多額の献金を受け、電力会社は絶対に損をしない儲ける仕組みを政治に作らせた。そのツケを払わされて きたのは国民だが、今やそのツケは、未来永劫、幾世代を経ようとも、支払い切れるレベルのものではなくなってしまった。