R:サボタージュを脅威として想定しているのですか。
小出:所内に入って来た誰かが、例えばどこかの配管一本を爆破してしまえば、原子力発電所が巨大な事故になるという、そういう装置ですので、労働者を大変厳しく監視します。不審な人間が入ってこないように、軍隊で守るというようなことをやっているわけです。
R:地震についてはいかがでしょう。大飯原発で素晴らしい判決が出ましたけど、あの裁判所の判断は「地震で壊れる可能性が高い」というものでした。想定外の地震というのは起こり得ますよね。
小出:当然、起こり得ます。これまで、きちんと地震の予知ということをできたためしはないわけですし、次々と想 定以上の地震が起きてきて、原子力発電所も設計を考え直すというようなことを長年、歴史的にやっているわけで、考えた以上の地震が起きるということはむし ろ当たり前のことです。
R:福島の場合は、地震が起きてから1時間経って津波が来ましたが、津波が来る前に、もう放射性物質が漏れていたという報道もありますよね。
小出:はい、そういうデータもありますし、津波が来る前に非常用電源がすでに止まっていたという話もあります。 原因をきちんと突き止めなければいけないのですが、残念ながら、事故現場に行くことすらできないという、そういう事故が今進行しているわけで、原子力発電 所の事故というのは大変過酷なものだなあと私は思います。
R:もし、九州の川内原発が再稼働をされ、火山が噴火したら、火山灰で目詰まりするのではないかという心配もあるのですが、そうしたことは起こり得ますか。
小出:はい、川内原発が建っている所は鹿児島県で、近くに桜島もあります。桜島のある鹿児島湾自体が、巨大な火 山の爆発の跡なのです。ですから、もし、あの周辺で大きな爆発が起きれば、火山灰あるいは火砕流というものが川内原発を襲う可能性はもちろんあるわけで す。火山の爆発の予知ということだって、当然、今の科学では完璧にできるわけではありません。万が一でも、川内原発が大きな事故になるということは、当 然、考えておかなければいけません。
R:あとですね、原子炉の燃料棒製造工場とか、あるいは、使用済み燃料棒を運搬する時に、襲われるということも考えないとダメですよね。
小出:そうですね。もちろんそれについては、原子力を推進している人たちも、場合によっては起こりうると考えています。原子力発電所の燃料の輸送情報というものは、すでにもう極秘にされていまして、関係する自治体にすら通知されないという、そんな状態になっているわけです。
R:確かに、そうした情報に接したことはないですね。
小出:かつて、ドイツの哲学者のロベルト・ユンクさんという方が『原子力帝国』 という本を書いてくれました。その中で、原子力というようなものを選択してしまえば、国家が情報を徹底的に管理する、そして、人々を徹底的に監視するとい う、そういう世界になるだろうと予言しています。
R:日本も特定秘密保護法が通りまして、着々とそういう、権力者が秘密を隠す体制ができ上がっています。非常に危ないですね。
小出:そうですね。安倍さんという人は大変危ない人だと私は思いますし、すでにどんどん戦争に向かって転げ落ちていっているように私には見えます。特に原子力の場というところに私はいるわけですし、今後もきちんと対応していきたいと思います。
海外で自衛隊が集団的自衛権を行使するようになれば、国内で報復テロが引き起こされる可能性も高まる。原発は絶好のターゲットとなるだろう。自民党議員の 中からは、北朝鮮のテロを想定し、自衛隊が原発警護を行えるよう法改正すべきだとの訴えも出ている。それが実現すれば、集団的自衛権行使と原発再稼動とい う二つの政策は相矛盾するものではなくなり、むしろ、軍事と原子力発電がより密接な関係を築いていくという、安倍内閣にとっては理想的な筋書きをもたらす ことになるだろう。