東京電力福島第一原子力発電所の事故から3年半以上が経ち、原発報道の中心は今や再稼動にからむ問題へと移りつつある。だが、福島第一原発では放射能汚染 水が日々漏れ出し、核燃料がどこにあるのか未だに分からない状況が続いている。最近の東京電力の発表を基に、福島第一原発の所内で起きている問題につい て、京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに聞いた。(ラジオフォーラム)
◆困難な遠隔作業 事故は今後も
ラジオフォーラム(以下R):東電の発表によりますと、2014年8月29日に3号機の使用済燃料プールでがれ き除去作業中の機器が落下したということです。重さ400キロの「操作卓」と呼ばれる機器だけでなくて、操作卓を据え付ける170キロの架台も絡まって落 下したそうで、このとき接触した可能性のある燃料集合体は10体もあるということです。こういう大変恐ろしい発表があったのですが、小出さん、核燃料集合 体にこういう物が接触するというのはかなり危険ではないのですか?
小出:燃料集合体は一応、ラックと呼ばれる、集合体1体1体を収納できる金属でできた格子状の置き場の中に収 まっています。集合体の頭の部分も、その格子のさやの中に収まっている状態で、基本的には保護されているはずだと思います。ただし、400キロの操作卓と 170キロの架台も一緒に落ちてしまったわけですから、水中ですので何がしか衝撃のクッションはありますけれども、それでもラック自体が破損をした可能性 は十分にあると思います。
そうなると、もちろん放射性物質がまた使用済燃料プールの水の中に漏れてくる、あるいは、気体状のものが外部に出てしまう、ということが起きたのだろうと思います。
R:また9月4日には、東電が2号機の圧力抑制室の下部外面調査の結果を発表しました。発表の中では、ロボット が繰り返し落下したため調査範囲が限られたことや、ロボットの撮影した画像に放射線量の高さが原因と見られるノイズが確認されたことが触れられています。 ロボットが落下した原因はまだ判明していないようですが、遠隔操作のロボットでは、トラブルの原因究明も容易ではありませんね。
小出:そうですね。先程の3号機の使用済燃料プールで機器を落としたという作業も、全ては遠隔操作なのです。現 場に行くことができませんので、遠い所から無線操縦しながら作業をしているわけです。大変難しい作業を燃料プールでもやっているし、この圧力抑制室でも、 全く人が行くこともできないほどの猛烈な被曝環境ですので、遠隔操作をするしかないのです。ロボットというものも基本的には放射線に弱い機械ですので、な かなか上手くいかないし、これからも難航するだろうと思います。
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