アメリカの新聞業界のヒエラルキーを大リーグのシステムに例えることがある。つまり、ニューヨーク・タイムスをニューヨーク・ヤンキースと考え、他 の大きな新聞をまとめてメジャーリーグとする。部数10万~15万部くらいの中新聞がマイナーリーグのトリプルAで、5万部くらいから下の小新聞がダブル A、そして田舎に散らばるコミュニティー紙がシングルA、もしくはルーキー・リーグということになる。(アイ・アジア編集部)
一部の有名選手を除くと、野球選手は皆リーグの底辺からプレーを始めるが、それは新聞記者も同じだ。たいていの者が小さな新聞社でジャーナリストとしてのキャリアを始め、経験を積みながら部数の大きな新聞へと階段を登るように転勤してゆく。
競争は激しい。一番下のファーム・リーグの選手がメジャーリーガーになれる確率は9人に1人だといわれているが、記者が大新聞に入る倍率はおそらくそれ以上だろう。
もちろん皆が皆メジャーな新聞で働くことを目指しているわけではない。キャリアを重ねてゆく途中で、家庭の事情(例えばパートナーのキャリア優先) などさまざまな理由により特定の新聞社や都市に留まる人もいる。ただ、20代初めで仕事を始めるにあたって、いつかニューヨーク・タイムスやワシントン・ ポストで働いてみたいと夢見ない記者はいないはずだ。
ちなみに給与も新聞のサイズにほぼ比例する。小新聞の記者一年目の年俸が約2万ドルだから、食べてゆくためにも必然的に上を見ることになる。ニューヨーク・タイムスの記者の給与は10万ドルを超える。
こんな仕組みなので、記者たちは常にステップ・アップのチャンスを窺いながら働くことになる。
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