いまでは財政、土地、農業、市場での税金徴収、それらのほとんどを統制しています。そうやって多くの場所を急速に支配下におさめました。武力で攻撃 し、掌握した地域が、彼らの新たな経済圏となっていくのです。北部のアレッポ周辺地域でも支配を広げ、財源や経済領域を獲得しています。イラクについても 同様です。さらに外国人を人質にして身代金も手にしています。

財政基盤がなければ巨大な軍事組織を維持できません。シリア国内、国外で攻撃をしながら、勢力範囲を広げているのは、戦略性をもって軍事機構や組織 基盤を強固にし、同時に経済機構も構築する。そして彼らが主張する「イスラム国家」の建設のためにプロジェクトやモデルを作り出そうとしているのです。そ こに暮らす住民にはもっとも容易な手段、暴力をもって支配を強いているのです。

シリア北部のクルド人居住地域ではクルド組織がイスラム国と戦っている。写真はコバニ(アイン・アル・アラブ)を防衛するクルド組織、人民防衛隊(YPG)。(2014年1月 撮影・玉本英子)
シリア北部のクルド人居住地域ではクルド組織がイスラム国と戦っている。写真はコバニ(アイン・アル・アラブ)を防衛するクルド組織、人民防衛隊(YPG)。(2014年1月 撮影・玉本英子)

 

◆イスラム国はクルド組織とも激しい戦闘を繰り広げていますが、衝突は拡大するのでしょうか?

ヘンミ記者:例えば、キリスト教徒は、自らを守る組織がまったくありませんでしたから、町を脱出するしかありませんでした。一方、クルド人居住地域では、クルド人の人民防衛隊(YPG)が地域を防衛してきました。
(※注:人民防衛隊YPG=クルディスタン労働者党PKKの傘下に置かれた、おもにクルド系シリア人の武装組織)

YPGは強力な思想性、組織性のもとに行動しています。戦闘でも死をいとわない戦い方をします。また、イスラム国がおこなっている斬首などのような 恐怖プロパガンダは通用しません。隣国イラクではYPGの勢力基盤はありませんから、イラクのクルド兵ペシュメルガとどう連携できるかが問題となるでしょ う。ただ支援もないなかでいくつものクルド人地域が包囲されています。そこに総攻撃をかけられたら、軍事的にどこまで持ちこたえることができるかはわかり ません。(つづく)

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