「イスラム国」はなぜ急速に勢力を拡大し、支配基盤を固めたのか。シリア人でドバイのアル・バヤン紙、特派員フェルハッド・ヘンミ記者 (29)は、イスラム国の軍事・経済的な組織戦略が背景にあると語る。インタビューは米軍のシリア空爆開始前、電話を通じておこなわれた。(全3回)【聞 き手・玉本英子】

イスラム国はラッカを中心に行政機構を運営するまでになっている。税の徴収や接収した石油施設を通じて、財政基盤を固めている。地元の有力部族をコントロールするなどして支配を広げていった。(イスラム国が公開した映像から)
イスラム国はラッカを中心に行政機構を運営するまでになっている。税の徴収や接収した石油施設を通じて、財政基盤を固めている。地元の有力部族をコントロールするなどして支配を広げていった。(イスラム国が公開した映像から)

 

◇掌握した地域が、彼らの新たな経済圏へ

◆イスラム国は勢力を拡大し続けていますが、なぜ彼らは短期間でこれほどの強大な力を持ったのでしょうか?

ヘンミ記者:これについてはさまざまな見方があります。内戦の混沌のなかで、シリアで頭角を現したイスラム国 は、隣国イラクの政情不安を利用し、イラクのスンニ派地帯に勢力を広げました。シリアのアレッポからイラクのディヤラ、そしてついにはモスルを制圧し、キ ルクークにまで進撃しました。反対勢力に対しては、処刑、弾圧する手法で支配地域を獲得していきました。

私が強く思うのは、いくつかの国々、トルコのような周辺国がイスラム国を直接的、間接的に支援しているということです。ヨーロッパなどから入り込ん でくるイスラム国の義勇戦闘員のほとんどはトルコを経由してやってきます。トルコはイスラム国の影響力拡大に大きな責任があります。

彼らは「イスラム国家を建設する」という明確な目標を掲げ、それを宣伝し、それに惹きつけられた外国人が次々とシリアに入り込んできたのです。さらにイラクやシリアの体制側も、彼らに武器を渡し、反対勢力や武装組織、クルド勢力を互いに戦わせている状況があります。

6月には、イラクのモスルを制圧しました。たくさんの軍事施設から最新のアメリカ製武器を奪いました。さらにモスルじゅうの銀行を支配下に置きました。つまり金庫にある大量の現金を獲得したのです。

例えば石油のある地域、デリゾールなどを支配下に置き、ひとつの資金源としました。さらに税金制度を導入し、住民生活のいくつもの分野から税金を徴収するシステムを作り、基盤を固めました。
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