◇国境封鎖で退路なく
シリア北部のコバニ(アラブ名アイン・アル・アラブ)では、武装組織イスラム国と、クルド組織・人民防衛隊(YPG)との激しい攻防 戦が続いている。住人のほとんどはクルド人で、イスラム国が町を掌握すれば住民殺戮が始まる、との危機感から多数が避難民となってトルコ国境に押し寄せて いる。イスラム国の包囲下にあるコバニの状況を、地元行政局で町の防衛担当責任者として働くイスメット・ハサン氏(48)が、電話で伝えてきた。
【聞き手:玉本英子】
◆食糧は十分ありますか?
イスメット氏:最低限の食糧はなんとかあります。確保は容易ではありませんが、トルコの平和民主党(BDP)から支援食糧が届けられます。(※注:BDP=トルコのクルド系政党) 町の北のトルコ側以外のルートは遮断されているので、物資も入ってきません。
◆人民防衛隊は持ちこたえることができるのでしょうか?
イスメット氏:トルコからクルド人の義勇戦闘員が来るとも聞きましたが、トルコ軍がすべての国境ゲートを封鎖し て以降は外からの応援はありません。このままでは武器も弾薬も尽きるでしょう。米軍の連日の空爆でもイスラム国の攻撃は止みません。先日も防衛隊の女性戦 闘員がイスラム国拠点に対し、自爆攻撃をかけて戦死しました。町が陥落すれば、大量虐殺が間違いなく起きます。人民防衛隊の戦士たちの決意は固いですが、 一般の住民は恐怖に脅えています。イスラム国は、人を殺すことをなんとも思わない集団です。制圧されれば、女性も子どもも死に直面します。
◆世界の人に伝えたいことはありますか?
イスメット氏:私たちの町、コバニの住民が置かれている状況、そして人びとの苦しみに、みなさんの関心を寄せて ください。まだ脱出できないでいる老人、女性、子どもがいます。住民保護の避難路の確保や問題解決の手立てをともに考えてください。ここで殺戮が始まる前 に、避難路または、周囲の地域と安全に通行できる手立てを確保できるよう国際社会に呼びかけてください。そして、ひとりでも多くの命を救ってください。
トルコ側は一部住民を受け入れたものの、大量の避難民流入に国境を統制するなどし、脱出できない住民も多数いる。トルコ国内ではクルド人が政府批判 のデモもあいついでいるが、国内のクルド問題とも連動するため、トルコ政府は慎重な姿勢を崩さない。米軍の空爆はイスラム国に部分的な損害を与えても組織 を壊滅させることはできず、そればかりか一般市民を巻き込む可能性もある。住民保護を最優先に暫定避難区域設定など一刻も早く国際社会が協調して事態解決 に取り組む必要がある。
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