◆世代間移行はイノシシでも?
同様の分析結果はほかにもあった。
渡邉准教授らはイノシシの親子2組も捕獲し、調べていた。
調査結果によれば、母イノシシより子のほうが筋肉、腎臓、肝臓の放射性セシウム濃度が高かった。また、子イノシシの胃の内容物は1kgあたり1595ベクレルと非常に高かった。
この原因を「世代間の移行と母乳によるものではないか」と渡邉准教授は考えていた。
だが、捕獲したイノシシの子は4カ月程度とみられたが、イノシシの授乳期が生後1カ月半から2カ月との報告や約3カ月半との報告があるため、母乳の影響はなくなっているか、薄れている時期だった。
「放射性セシウムの母子間移行以外にも、この時期の特異な摂餌、もしくは代謝が影響している可能性もある」(渡邉准教授)など、現段階でははっきりしないという。
今後、野生動物の調査対象を拡大し、詳細に実施することで、次世代への汚染なども含め、より詳細な実態把握が必要だろう。(おわり)
<<< 野生生物調査にみる放射能汚染(1)~現在も続く原発からの放出
※『日経エコロジー』2014年9月号掲載の拙稿「福島、野生生物の放射性物質、一部で濃度低下、卵への移行も」に加筆・修正
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