◆「水の遮へい効果がある」ため対策不要
だが、国側の反応は良くないという。
環境省除染対策チームに確認すると、「いま生活空間の対応をしているところ。魚の被曝をどう抑えるかは明示的には守備範囲とは思ってない」との見解だ。
水産庁に聞いてみると、いくつかの課をたらい回しにされたあげく、「除染は環境省が担当」というばかりだった。
8月22日開催の「環境回復検討会」で、環境省は湖沼や河川では水の遮へい効果があるため「基本的に除染しない」との方針を表明した。
環境省による除染は健康被害の防止と生活環境の保全という2つの理由で実施されており、水による遮へい効果があって、基本的に被曝原因とならないというのがその理由だ。子どもが遊ぶような水辺で高線量などが確認された場合などは「対応する」という。
検討会の委員である東京大学大学院工学系研究科の森口祐一教授が「内水面漁業の観点も重要」として対策を求めたが、環境省と農水省は回答すらしなかった。
その後改めて確認したところ、水産庁栽培養殖課は「何か方法があれば予算化も考えたい」と前向きな返答だった。だが、同時に「現状では方策がない」とも付け加えた。少なくとも何らか方策があれば、対策に踏み込もうとしてはいるようだ。
8月下旬には今後の調査研究の可能性を探る学識経験者らによる自主的な研究会が開催されたが、具体的な対策までは遠い。
福島県では解散に追い込まれた漁協の話もある。健康被害防止や生活環境保全といった観点だけではなく、国レベルの取り組みが必要なのではないか。(おわり)
【井部正之】
※『日経エコロジー』2014年10月号掲載の拙稿「いまだ出荷制限続く淡水魚 国レベルの取り組みが急務」に加筆・修正
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