◆「地震の巣」の上でプルサーマル

R:この伊方原発、小出さんにとっても大変深い繋がりがあるそうですね。

小出:はい。私は1974年に京都大学原子炉実験所に就職してきたのですが、ちょうどその前年の秋から伊方原子 力発電所の設置許可取消裁判というのが始まりました。私もその裁判に関わって、証人に出たりしたことがありました。そのために度々、現地にも行きました し、現地の放射能汚染の測定ということもやってきました。だから、私にとっては大変馴染みの深い原子力発電所です。

R:今、伊方には1号機、2号機、3号機まであり、全て稼働はしていないという状況です。この伊方原発には、どのようなリスクがあると考えられますか。

小出:はい、皆さんは中央構造線というのをご存じでしょうか。日本最大の活断層といわれているものです。 1973年に小松左京さんが『日本沈没』という小説を出してくれたことがありましたが、それは、この中央構造線を境に日本が割れて海の中に滑り落ちていく という、そういう事を題材にした小説でした。それほど、この中央構造線というのは、日本という国の中では重要な位置を占めていまして、もし、この中央構造 線という活断層が動くようになれば、巨大な地震が起きるだろうと考えられています。その中央構造線の本当に端の所に伊方原子力発電所は建っています。

R:その中央構造線に加えて、ここ数年は南海トラフという言葉を非常によく耳にします。その両方が関係するということもあり得るわけですよね。

小出:はい、中央構造線は伊方原子力発電所のすぐ近くの北側を走っているのですが、南の方には南海トラフとい う、また巨大な断層というかプレートの境界というものがあって、そこでも南海地震、東南海地震というような巨大な地震が過去、繰り返し繰り返し起きてきた ということが分かっています。ですから、伊方原子力発電所は、北には中央構造線、南には南海トラフがあるという、まさに地震の巣のような所に建っているの です。

R:そのような立地の伊方原発ですが、1号機から3号機の中で、特に3号機ではプルサーマルで運転を行おうとしていますね。

小出:はい。3号機はプルサーマルという非常に馬鹿げたというか、安全性を犠牲にし、そして経済性もないことを やろうとしているわけです。プルサーマルというのは、プルトニウムという物質を燃料に使うということなのですが、プルトニウムというのは、人類が遭遇した 最大の毒物と言われているほどの毒物でして、普通の原子力発電所で使っているウランに比べれば、何万倍、何十万倍も毒性が強いという、そういう物を燃料と して使ってしまおうという計画なのです。なんとしても止めさせなければいけないと思います。
再稼働が間近の九州電力川内原発でも、ヨウ素剤が配布されている。しかし、伊方原発のように再稼働が差し迫っていない原発での配布は珍しい。とはいえ、原 発が稼動していなくても、燃料プールに燃料棒が保管されている限り、事故はいつ起こるか分からない。そのように考えれば、すべての原発の周辺住民に、速や かにヨウ素剤が配布されるべきだろう。

 

「小出裕章さんに聞く 原発問題」まとめ

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