◆汚染ゼロは無理
今中:
放射線障害には急性と晩発性があり、福島の場合、問題は後になって出てくる晩発的影響です。政府は晩発的影響を抑えるよう速やかに措置をとらなければいけなかったのに、原子力防災システムのメルトダウンで、人々は余計な被ばくを余儀なくされました。
福島の子どもの甲状腺がんが増えていることが問題になっています。当局側は、丁寧に調べることによって発見率が上がったから、見かけ上増えているだ けだと言っています。今の段階では、はっきり結論は出せません。でも増えているのは確か。これからも増えることを考え、対策を講じるのが大事だと思ってい ます。
子どもたちを守るため最低限必要なのは、子どもたちの登録制度をつくり、被ばく量を見積もり、定期健診で追跡調査をすること。それも福島だけでなく、もっと周りを含めてやらないと、本当のことはわからないだろうと思います。
私たちはこれから100年、200年と、放射能汚染に付き合っていかなくてはなりません。どこまでの被ばくを我慢するのか、受け入れるのかというこ とです。汚染ゼロということはいまや無理だと私は思います。一般的な答えはありません。一人ひとりが判断して自分なりに答えを出していかなければならない のです。
しかし、考える出発点としては年間1ミリシーベルトくらいが我慢の上限だろうと思います。それが福島では、子どもも赤ん坊も含め、20ミリシーベルトまで安全・安心というのが現状です。私のような放射線作業従事者の線量限度が年間20ミリ。やりすぎだと思います。
放射線作業従事者としての私の感覚では1マイクロシーベルトは「気にしない」。10だとちょっと浴びた感じ。100はかなり浴びた感じ。1000=1ミリシーベルトになると実験所では「お前何してた?」と始末書を書かされます。
放射能汚染と向き合うには、放射能、放射線について学んでほしい。ベクレルとシーベルトに慣れ、値になじんで下さい。【鈴木祐太、栗原佳子 新聞うずみ火】