北京の風は冷たい。
冷たいだけでも十分なのに、風はまるで台風が上陸したかのような強さで街を襲う。そのいかにも冬の北京らしい寒風に晒されると、自分が大陸にいることを否応なく意識させられる。
街路樹の葉は、乾いた風に一気にもぎ取られ、紙吹雪のよう舞った。アスファルトの上をすべり、くるくる回転する落ち葉は、魔法をかけられたかのようだ。
北京の風は、服の繊維の隙間から忍び込み骨の髄まで冷やす。心臓が小刻みに震えるような寒さだ。しかし、時にはその冷たい風が、愛しい二人の距離を縮め、気持ちを温める。ならば寒風も悪いばかりではないか。