12月10日に施行される「特定秘密保護法」の廃止を求める集会が11月6日夜、大阪市北区の中ノ島公園水上ステージで開かれ、市民ら300人が参加した。(矢野宏 新聞うずみ火)
◆「知る権利」とプライバシーの権利が侵害される可能性大
特定秘密とは、国の安全保障に著しい支障を与える恐れがある情報のこと。対象になる情報は「防衛」「外交」「スパイ活動」「テロの防止」で、閣僚ら各省庁のトップが判断する。大阪弁護士会前会長の福原哲晃弁護士は5つの問題点を挙げている。
[1]特定秘密の範囲 指定範囲が広く、あいまいで拡大解釈もできる。情報を管理する行政機関が「これは秘密」と決めれば秘密になってしまう。
[2]プライバシーの侵害 特定秘密を取り扱う人を調査し、管理する「適正評価制度」が規定されている。犯罪歴や薬物乱用、精神疾患など、調査は家族や同居人にも及ぶ。
[3]厳罰化 漏らした公務員は最高で懲役10年。国会議員も刑事罰の対象に含まれる。
[4]取材・報道の阻害 特定秘密を知ろうとする行為は「特定秘密の取得行為」として処罰の対象になる。
[5]秘密は永久に 情報公開は保証されておらず、情報公開法によって請求しても開示してくれないケースもある。
情報公開や知る権利を前提にして、国家の「秘密」をできる限り少なくするのが、むしろ民主主義国家の大きな流れだが、秘密を肥大化させていくのは時代に逆行している。
にもかかわらず、安倍政権は昨年12月6日、秘密保護法を強行可決した。6日を「秘密保護法ロックの日(6の日)」として、全国各地で廃止を求める集会が毎月開かれている。
この日、大阪では「特定秘密保護法違憲訴訟」の原告の一人で、元朝日新聞記者の吉竹幸則さん(66)がその危険性についてアピールした。
「権力・官僚・政治家は情報を隠し、ウソをつく。権力側のウソを暴くには内部の関係者からの情報提供が不可欠だが、秘密保護法は『良心の自由』に基 づく内部告発を規制するため、秘密社会が横行する」と指摘。さらに、「既存メディアは権力者に権限を握られており、彼らだけに頼ってはだめだ」と訴えた。
「いくら政府が『報道の自由を守る』と言っても、どこまで守るのか定かでない。秘密保護法は権力者の意向でどうにでも運用できる。権力側がある程度 守ると言っても、記者クラブに属する記者だけを保証するのかもあいまい。知る権利を守るためにはフリーの記者活動が不可欠だが、権力の弾圧を受けやすい。 権力者がこの法律を恣意的に運用すれば、取材活動が制限され、逮捕される恐れも出てくる」
吉竹さんは新聞記者時代、無駄な公共事業・長良川河口堰の調査報道に取り組んだ。水害の危険もないのに住民を騙して強行着工した事実をつかんだが、 新聞社から記事を差し止められ、異議を申し立てると記者職をはく奪された経験を持つ。その後、裁判を起こした体験を踏まえ、吉竹さんは「最近の裁判所は名 誉棄損訴訟でも幅広く棄損を認め、『表現の自由』を制限している」と指摘した。
アピールのあと、集まった市民らはシュプレヒコールを上げてデモ行進した。
【矢野宏 新聞うずみ火】