12月14日に投開票された衆院選は、自民党が291議席を獲得、公明党と合わせると326議席になり、3分の2を超えた。これで、衆議院で可決された法 案が参議院で否決されても、出席議員の3分の2以上の賛成があれば再議決し、成立させることができる。法案だけではない。これからの4年間で改憲も可能に なるのだ。この国は再び戦前へ回帰するのか。かつてを知る旧海軍兵の瀧本邦慶さん(93)=大阪市東住吉区=に話を聞いた。(新聞うずみ火/矢野 宏)
◆「戦争できる国」目指す選挙だった
「戦前のような暗黒社会になりますよ。なぜ、安倍総理の下心を知ろうとしないのか。今回の選挙の争点は経済ではない。戦争する国になるかならないかでしょう」
瀧本さんの怒りは収まらない。
「親よりも先に子どもが死ぬ。それが戦争なんです。息子が戦死した母親は泣くこともできなかった。『名誉の戦死をして帰ってきたのに涙を流すとは何 事か。この非国民が』と言われた時代でした。それ以上の暗黒社会がやってきます。自衛隊はアメリカ軍の弾除けに使われる。知られたらいけないので特定秘密 保護法をつくった。防衛やスパイ活動防止などと、もっともらしいことを言っていますが、本当の狙いは国民一人ひとりを監視すること。思想や行動を制限する ことです」
瀧本さんは17歳で海軍に志願。2年後、航空母艦「飛龍」の航空整備兵として真珠湾攻撃に参加し、ミッドウェー海戦では負傷しながらも九死に一生を得て佐世保に帰港した。ミッドウェーでの負傷者は一つの病棟に収容され、外出も一切禁止された。
瀧本さんは偶然目にした新聞で、その理由を知る。大本営は日本軍の戦果を大々的に報じ、「我が方の損害は航空母艦一隻喪失、同一隻大破、巡洋艦一隻大破、未帰還飛行機三十五機」と過小報告していた。