◆ ほとんどが高齢者、障がい者と病人 労働力に使えず?
2015年1月17日、イスラム教スンニ派系武装組織イスラム国は、数か月にわたって拘束していた少数宗教のヤズディ教徒(ヤジディ教徒)の一部、196人を解放し た。ほとんどは高齢者、障がい者、病人で、シンジャル地区周辺に監禁されていた。イスラム国側はこれらの人たちをモスルの集会場に集め、17日、キルクー ク郊外のクルド自治区に通じる検問所まで連れていったという。
解放された少女、ヴィナン・ハサンさん(13)は障がい者のふりをしていたという。
「ひげを伸ばしたイスラム国の男性たちは、いつも汚い言葉で私たちをののしり、若い女性たちが次々に連れて行かれた。私もいつ連れ去られるのか、殺されるかと恐怖の日々だった」
と涙をこぼしながら語った。
イスラム国は8月、ヤズディ教徒が多く暮らしてきたイラク北西部シンジャル地域を制圧。ヤズディ教徒住民を殺害したり、女性を拉致し奴隷とするなどした。今回、解放されたことについて、解放された男性のサイード・ムラケルムさん(30)は 「私たちは『イスラム教徒にならないと殺す』と脅されたため、彼らの前では改宗を受け入れた。だから私たちを殺さなかったのだと思う。年寄りや病人などは労働力として使えず、殺すこともできなかったから解放しただけではないか」と話す。
ヤズディ教徒の団体によると、いまも女性を中心に数千人がイラクやシリア国内のイスラム国支配地域に拉致されたままだという。現在 、モスルでは電話やネットなど一切の通信がイスラム国により遮断されているため、救出が困難になっている。(キルクーク・玉本英子)