◆ 密約関連の文書を情報開示すべきだという答申
前回述べたように、日本における米軍の特権をより強固なものにするための日米密約のひとつに、「民事裁判権に関する密約」があります。
米軍機墜落事故や米兵犯罪などの被害者が損害賠償を求める民事裁判に、米軍側はアメリカの利益を害するような情報は証拠などのために提供しなくても よく、またそのような情報が公になりそうな場合は米軍人・軍属を証人として出頭させなくてもよい、という米軍に有利な秘密の取り決めです。1952年7月 に日米合同委員会で承認されました。
その密約文書が含まれているであろう「合意に係る日米合同委員会議事録」という行政文書を、外務省が不開示にしたことに対し、筆者は情報公開法にもとづいて不開示決定の取り消しを求める異議申し立てをしました。
そして、内閣府の情報公開・個人情報保護審査会(以下、審査会)は2012年6月18日、外務大臣に対し、「日米安保条約に基づく日米地位協定の民事裁判権に関する合意について記した文書等の一部開示決定」という答申を交付しました。
つまり、「合意に係る日米合同委員会議事録」の関連部分の不開示決定を部分的に取り消して、開示すべきだという画期的な答申です。その答申の写しは筆者のもとにも郵送されてきました。
なぜ画期的かというと、外務省がひた隠しにする日米合同委員会(日本の高級官僚と在日米軍高官が地位協定の解釈や運用を協議する機関)の、民事裁判権に関する秘密合意すなわち日米密約を明るみに出すことにつながるからです。
ところが、外務省は未だに答申に従わず、開示決定の手続を取ろうとしません。答申が出てから2年半も経つというのにです。