1月17日で発生から20年を迎えた阪神淡路大震災。今も私たちの記憶には、互いに助け合う人々の姿が刻まれている。だがその教訓は今も生きているのか。 生活基盤の弱い人々の再生をどこまで支えてこられたのか。20年前に取材した被差別部落と朝鮮学校を改めて訪ねた。(新聞うずみ火/矢野 宏)
◆薄れゆく差別認識
同和対策事業は、1969年に「同和対策事業特別措置法」(同対法)が制定されて以来続いてきたが、それも2002年をもって終了した。行政上の同 和地区は消滅したが、部落に対する差別意識は消えていると言えるのか。解放同盟兵庫県連合会によると、「2002年に特別対策が切れたことで、部落への差 別認識が薄れている」と指摘する。
まず、結婚差別について3件の事例が報告されているが、これまでと違いがあるという。
「以前なら『うちの子はまだ若いから』などと、相手が部落ということをはっきりと言わなかったのですが、最近は『同和地区の人間だから』と露骨に言って子どもの結婚に反対するようになりました。悪いことだと思っていないのでしょう」
就職差別についての案件は出ていないが、1件の戸籍情報不正取得が問題視されている。結婚か、就職かの身元調査の可能性もあるという。
この20年間で増えたのがネット上での差別事件である。
「動画カメラを回して部落に入り、『対策地区』と題した画像を流したケースや部落の地名を延々と流すなど、陰湿化しています。2002年以降、学校 で部落問題を学ぶ研修がない中で、『2ちゃんねる』などのインターネットサイトで知識を得る若者が多い。教師も世代交代して研修を受けていない人も増えて いるため、生徒たちの間違った認識に対してきちんと訂正できないのです」
「ネットでしか知らない今の子どもたちは、親から『あかんからあかん』とか、『きょうだいの結婚にも差し支える』などと反対されると、抗えないのです」
そして同連合会はこう言い添えた。
「マスコミも同和問題は売れると思っているようです。特別対策が終わったことで『解禁』になったと思っているのではないでしょうか」