東京電力福島第一原発の事故が起きてから間もなく4年が経とうとしている。見通しの甘さが当初から指摘されていた除染作業と汚染水対策は、現在どのように進められているのか。この二つの作業の現状と課題について京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに聞いた。(ラジオフォーラム)
◆東電はいつか必ず海に流す
ラジオフォーラム(以下R):汚染水対策として、放射能除去装置であるアルプス(ALPS)が2014年10月から本格稼働しました。アルプスによる除染作業はうまくいっているのでしょうか。
小出:これまで東京電力も国も放射能で汚れた水の中からセシウムというただ一種類の放射能だけを取り除いてきた のですけれども、セシウム以外にも多くの放射性物質があります。中でも重要なのがストロンチウムという放射性物質で、それはこれまで全く取り除けなかった ものです。それを何とかして取り除きたいということで、アルプスという装置を設置しようとしたわけですが、残念ながらほとんどまともに動いていません。
R:何が問題だったのでしょうか。
小出:一番問題なのは現場の環境です。福島第一原子力発電所の敷地の中が、すでに放射能の沼のような状態になっ ていて、どんな装置を作るにしても、どうやってその装置を動かすにしても、すべてが被曝を伴ってしまいます。安全な場所で着実にきちんとした装置を組み立 てて、それを被曝もしないままゆっくりと運転できるというような状況ではないのです。次々と新しいトラブルが出てきてしまって、それを乗り越えるためにも また被曝をしてしまうという環境なのです。私はもちろんアルプスが期待通りに動いてほしいと願いますけれども、そうなることがとても難しいという状況なの です。
ただし、ALPSが動いたとしても、取り除けない放射能はあります。トリチウムという名前の放射性物質はALPSや他の浄化装置が動いたとしても、 全く取り除くことができません。ですから、トリチウムに関しては、何の対策もとりようがありませんので、いつの時点か、「海に流す」と必ず彼らは言い出し ます。
R:取り除けなかった放射性物質が含まれたままの汚染水が海に出るということですね。
小出:そうです。