◆東電のゴミは東電へ
R:そういう福島の放射能のいわばゴミの後始末は、どのような形が望ましいでしょうか。
小出:本当にやりたいとすれば、放射能を消したいわけですけれども、残念ながら、人類は放射能を消すという力を 未だに持っていないのです。ご質問につられて私も先程から「放射性廃棄物」という言葉を使ってきましたが、実は私は放射性廃棄物という言葉を使わないよう にしているのです。
R:そうでしたね。失礼しました。
小出:なぜかと言うと、消すことができない放射能を環境に棄ててはいけないからです。ですから私は「放射性廃棄物」ではなく「放射性廃物」と呼んできたのです。
放射能は、消すことができないわけですから、とにかく閉じ込めるしかないわけです。ただし、原子力を使うことによって生み出される放射性物質の中には、寿 命の長いものもありますので、閉じ込めるといっても10万年、100万年閉じ込めておかなければいけないというものなのです。
残念ながら福島第一原子力発電所の事故が起きて、大量の放射性物質を環境にまき散らしてしまったわけで、それを本当にこれからどうできるのか私もよく分からないという、そんな状態の前で立ちすくんでしまっているわけです。
R:大量の放射性廃物を今、国は何ケ所かの中間貯蔵施設に集めて、「そこは永久じゃないよ」ということも法律で作って、なんとか中間貯蔵施設に持っていこうとしています。こういうやり方でいいんでしょうか。
小出:私は決定的に間違えていると思います。今、中間貯蔵施設を造られようとしているのは、大熊町と双葉町にま たがる地域。そこに、約16平方キロメートルの民有地を買い集める、あるいは、30年で返すというようなことを今、政府が言っているわけです。地上権だけ の設定というような案も出ていますけれども、いずれにしても民有地なのです。被害を受けた人々の土地に、また放射能のゴミを押し付けようということを今の 政府はやろうとしているわけで、私はやってはいけないと思います。
R:となると、他にどのような可能性が考えられますか?
小出:福島第一原子力発電所が環境にばらまいて、環境を汚染している放射性物質は、もともとは東京電力の福島第一原子力発電所の原子炉の中にあったものです。れっきとした東京電力の所有物なわけですから、東京電力に返すというのがいいだろうと私は思います。
R:どういうことでしょうか。
小出:私は実際にできるだろうという案を持っているのですが、それは福島第二原子力発電所の敷地に放射能のゴミ は全て集める。そこで、一括して管理をするというやり方が一番いいと思います。当然、福島第二の再稼働などやってはいけないわけで、ここを放射能のゴミ捨 て場にするというのが、私は論理としては一番いいいだろうと思います
R:最後の質問になりますが、いわば「負の遺産」と言ったらいいでしょうか、マイナスの遺産を私たちはこの先長い間、何百世代、何千世代の子子孫孫に残してしまうわけですが、これを残さないようにする方法はないですよね。
小出:まずは、自分で始末のできないようなゴミを生み出さない。つまり、これ以上原子力発電などをやらず、即刻 止めるという選択がまず必要だと思います。でも、即刻止めたとしても、私たちの世代ですでに広島原爆に換算すると、120万発とか130万発分もの放射性 物質を作ってしまっている。できれば私としては、自分たちが生み出した放射能を消したいと思っていますし、その研究もすでに70年ほど続いています。残念 ながら、未だにその方策が見えていないのですけれども、私たちの世代の責任として、何としてもその方策を私は見つけたいと思います。