福島第一原子力発電所には、未だ実態のつかめない燃料デブリ(メルトダウンした核燃料)と、燃料プールに眠る燃料棒がある。それらをいかに取り出し、どう 保管するかは、まだまだ議論の余地がある。問題点と今後の展望について、京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに聞いた。(ラジオフォーラム)
◆「燃料デブリ」の取り出しは不可能
ラジオフォーラム(以下R):チェルノブイリ原発もスリーマイル島原発も、事故を起こした原子炉は1基だけでしたが、福島第一原発では4基同時に廃炉をしないといけません。無理のある大変難しい作業になりそうですね。
小出:そうだろうと思います。人類が初めて遭遇している大変な事故ですから。どうやったら収束できるかということは経験的には分かりませんし、とにかく知恵を絞って一歩ずつやるしかないということです。
R:核心は、燃料デブリ(熔け落ちた核燃料・熔解燃料)を取り出すことができるのかどうかです。今後の事態を見守らないといけませんが、この燃料デブリの取り出しについて、小出さんはどのようにお考えですか。
小出:私は取り出せないと思います。国や東京電力は、以前から原子力発電所は事故など起こさないと言って、大変楽観的な見通しの下に原子力発電というものを進めてきてしまいました。
福島の事故が起きた時も、事故をとにかく軽く考えたいということで、初めのうちは「炉心は熔けてないよ」とか、国際事象評価尺度というものに照らせ ばレベル4だとか言っていました。でも、結局レベル7という一番破局的な事故だという事になってしまったわけですし、とにかく楽観的に彼らは対処しようと してきたのです。
燃料デブリの取り出しということに関しても、国や東京電力はそのデブリが圧力容器の底を抜いて、格納容器の床の上にまんじゅうのように積もっている のだという想定をしています。もしそうであれば、圧力容器の底を全部削って穴を開けて、格納容器の床を上から見ることができるだろうし、上に取り出すこと もできるだろうというのが、彼らが描いているいわゆるロードマップなのですね。
でも、もしそうだとしても、上から取り出す為には、30メートルも水の下にある物をつかみ出さなければいけないわけです。まずそれもできないでしょ うし、私自身はその熔け落ちた物が真下にまんじゅうのように溜まっているなんてことは決してあり得ないと思います。恐らく、もうそこら中に飛び散ってし まっていますので、それをつかみだすことは基本的にできないと思います。