◆ヨルダン人パイロット焼殺を1月8日に発信の地下活動家に聞く

武装組織イスラム国(IS)は、後藤健二さんを解放する代わりに、ヨルダンに収監中のイラク人女性死刑囚サジダ・アル・リシャウィの 釈放をヨルダン政府に求めた。だが後藤さんは殺害され、さらにヨルダン軍パイロットのモアズ・カサスベ中尉の焼殺映像が2月3日に公開される展開となっ た。だが、ISの「首都」ラッカ市内で地下活動を続けるイブラヒム・アルラッカウィ氏は、IS戦闘員がパイロットを焼殺した話をしているのを耳にし、1月 8日にすでにその情報をツイッター上にアップしていた。そのアルラッカウィ氏と2月上旬に直接通話して聞いた。【取材:玉本英子】

ISは、ヨルダン空軍パイロット、カサスベ中尉を空爆現場に連れて行き焼殺、映像を公開した。「空爆で市民を殺害する十字軍同盟国への当然の仕打ち」と処刑を正当化した。(IS映像)
ISは、ヨルダン空軍パイロット、カサスベ中尉を空爆現場に連れて行き焼殺、映像を公開した。「空爆で市民を殺害する十字軍同盟国への当然の仕打ち」と処刑を正当化した。(IS映像)

 

201506RED_sq01.gif 「俺たちはヤツを焼いた」とIS戦闘員は言った

◆ラッカ市内で日本人人質の情報や噂はなかったということですが、ヨルダン人パイロット(モアズ・カサスベ中尉)についてはどうですか?アラブメディアによるとあなたが世界で最初に、パイロットの焼殺を報じたということですが、どうやってその情報を得たのでしょうか?

アルラッカウィ氏: 安全上の理由から、ラッカのどこで聞いたのかは言うことができませんが、ISの戦闘員が笑いながら私の所にやって来て、「俺たちはヤツを焼いたぜ」と言う のです。嬉しそうでした。他の2人の戦闘員がやってきて「誰を焼いたんだよ?」と彼に聞きました。すると「ヨルダン人のパイロットを生きたまま焼き殺した のさ」、「処刑の時、その場所にいてこの目で見た」と言うのです。

私はこの話を聞いた時、何のことかよくわからず混乱しました。その2人の戦闘員も「嘘だろ」と言ってその話を信じませんでした。でも彼は、「本当に 自分はそこにいた、何百万回でも誓う」と言うのです。私は、イスラムでは人を焼き殺すことはしないので、彼らがウソを言っているのではないかと思いまし た。いくらISでもそんなことはしないだろうと思ったのです。ですからその時の自分のツイッターでは、「ISがヨルダン人パイロットを処刑したと言ってい る」と書くだけに留めました。もし彼らが認めたら、事実だろうし、認めなかったら確認できない話ということにしました。

◆あなたがその話を聞いたのは、いつのことですか?

アルラッカウィ氏:1月8日でした。ラッカです。
※ヨルダン政府は、カサスベ中尉は1月上旬にはすでに殺害されていたと発表している。

◆昨年8月、イラク北西部のシンジャルをISが制圧し、少数宗教のヤズディ教徒(ヤジディ教徒)の女性たちがISの支配地域に連行 されました。私はラッカなどから逃れてきたヤズディ教徒の女性たちを取材しましたが、拉致された多くが強制結婚や「性奴隷」として売られていました。あな たはラッカで拉致されたヤズディ教徒たちを見たことがありますか?

アルラッカウィ氏:はい、何人か見たことはあります。それは学校に空爆の爆弾が炸裂したとき のことでした。校舎の中にいた多くの女性たちが、民家に逃げようとしました。彼女たちはヤズディ教徒でした。皆、ベールをかぶっていたので顔は見えません でしたが、私の近くで起きたことでした。ISのバハルンサフィ・エミール旅団が地区を取り囲み、女性たちを捕まえていました。

◆それ以外でヤズディ教徒の女性たちのことを見たり、聞いたりしたことはありますか?

アルラッカウィ氏:いいえ、ラッカではヤズディ女性は普通の住民の所にはいないのです。私は ISの関係者を直接知りませんから、家などを訪問した時にそういう女性がいるのを見たことはありません。彼女たちは、IS戦闘員のためだけにラッカに連れ て来られ、常に監視の下に置かれているのです。(つづく)

アルラッカウィ氏は、1月8日のツイッターで、「ヨルダン人パイロットを処刑した」と戦闘員が話していた」「誰が焼き殺されたかは未確認」と書き込んでいる。これが事実とすれば、後藤さんとリシャウィ死刑囚との身柄交換を要求する音声メッセージが出る2週間以上前に、すでにカサスベ中尉は殺害されていたことになる。(写真はアルラッカウィ氏のツイッター画面)
アルラッカウィ氏は、1月8日のツイッターで、「ヨルダン人パイロットを処刑した」と戦闘員が話していた」「誰が焼き殺されたかは未確認」と書き込んでいる。これが事実とすれば、後藤さんとリシャウィ死刑囚との身柄交換を要求する音声メッセージが出る2週間以上前に、すでにカサスベ中尉は殺害されていたことになる。(写真はアルラッカウィ氏のツイッター画面)
カサスベ中尉の殺害を受けて、ヨルダン政府はISへの報復空爆作戦を宣言。写真は出撃するヨルダン空軍機。(ヨルダン空軍映像)
カサスベ中尉の殺害を受けて、ヨルダン政府はISへの報復空爆作戦を宣言。写真は出撃するヨルダン空軍機。(ヨルダン空軍映像)
アルラッカウィ氏は、焼殺映像と実際の空爆地区などから中尉の殺害場所を推定し、衛星写真と照合し公開している。ラッカ内部で密かに活動するからこそ知りえる情報は多い。ISに見つかれば処刑される可能性がある。常に命の危険が伴う。(写真はアルラッカウィ氏のツイッターより)
アルラッカウィ氏は、焼殺映像と実際の空爆地区などから中尉の殺害場所を推定し、衛星写真と照合し公開している。ラッカ内部で密かに活動するからこそ知りえる情報は多い。ISに見つかれば処刑される可能性がある。常に命の危険が伴う。(写真はアルラッカウィ氏のツイッターより)
ヨルダン軍パイロットは空爆作戦に参加して拘束され焼殺されたが、ISは過去にもアサド政権の政府軍兵士を空爆現場に連れて行って処刑する映像を公開している。ひざまずいているシリア政府軍兵士4人は空爆現場で銃殺されている。背後にあるのはシリア政府軍によるとみられる爆撃で破壊された建物。このあと4人の兵士の遺体は車でラッカ市内を引きずり回された。(IS映像)
ヨルダン軍パイロットは空爆作戦に参加して拘束され焼殺されたが、ISは過去にもアサド政権の政府軍兵士を空爆現場に連れて行って処刑する映像を公開している。ひざまずいているシリア政府軍兵士4人は空爆現場で銃殺されている。背後にあるのはシリア政府軍によるとみられる爆撃で破壊された建物。このあと4人の兵士の遺体は車でラッカ市内を引きずり回された。(IS映像)
昨年8月、イラク北部シンジャルがISに制圧され、3000を超えるヤズディ教徒の女性が拉致された(ヤズディ団体調べ)。彼女たちはイスラム教に改宗させられた上、強制結婚や奴隷として戦闘員やIS協力者の間で分配された。写真は、ISに拉致されたのち、命からがら脱出して来たヤズディ教徒の姉妹。(イラク・ザホーで今年1月・玉本英子撮影)
昨年8月、イラク北部シンジャルがISに制圧され、3000を超えるヤズディ教徒の女性が拉致された(ヤズディ団体調べ)。彼女たちはイスラム教に改宗させられた上、強制結婚や奴隷として戦闘員やIS協力者の間で分配された。写真は、ISに拉致されたのち、命からがら脱出して来たヤズディ教徒の姉妹。(イラク・ザホーで今年1月・玉本英子撮影)

 

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