◆技術過信が安全神話へ

R:日本は歴史を振り返ると、そういう、とてつもない、広島原発の3万発分に当たるエネルギーを放出した大地震というのが100年に1度は起こってきた歴史があるわけですね。

小出:そうです。日本という国は世界一の地震国ですし、私たちが全く望まないけれども、やはり地震というのは周期的に起きてしまうというものなのです。

R:そういう日本で原発を造ってきたわけですが、そこで長い間言われてきたのは「大丈夫です」や「日本の原発は 安全です」であり、その結果、多くの人が「大丈夫だろう」と思ってきた。つまり、つくる側、推進する側の言葉を真に受け、一般国民も「日本の科学技術は世 界一の相当レベルの高いところにあるのだから、その科学者が言うのだから安全だろう」と思いこんできたわけです。これは罪が深いことだと思うのですが。

小出:ええ。

R:原子力の専門家として、科学者として活動されてきた小出さんの立場からすると、そうした原子力の安全神話を語ってきた人たち、この人たちを科学者として、どういうふうに評価されますか。

小出:大変罪深い人たちだと私は思います。日本人は、日本が科学技術立国だとか原子力の先進国だとか聞かされると、何か嬉しくて、それを信じてしまうわけですけれども、決してそんなことはありません。
もともと日本という国は、江戸時代に長い間鎖国ということをやっていまして、西洋型の科学技術に触れたというのは、近い過去になってからでした。それ以 降、なんとかヨーロッパ、米国に追いつけ、追い越せとやってきたわけですけれども、それでも時間が流れた分だけ、向こうも先に進んでしまうわけですから、 日本が科学技術の先進国であるとか、特に原子力などで先進国であるなんていうことは全くないのです。

それなのに、あたかも自分たちは安全な知識を持っているかのように、原子力を進めてきた人たちが言ってきたわけです。本当に罪深いことだと思いま す。挙句の果てに福島第一原子力発電所の事故を引き起こしてしまったわけですから、せめて責任を取るべきだと思うのですが、誰一人として責任を取らないと いう状態になってしまっています。

R:これはもちろん行政もそうですし、科学者にも責任があるわけですよね。

小出:少なくとも、福島第一原子力発電所に対して安全審査をして、「安全性を確認した」と言ってお墨付きを与えた学者がいるわけですから、そういう人たちは決定的な責任があるし、きちんと責任を取らせなければいけないと思います。

R:原発問題だけじゃありませんけれども、無責任な体質の国に日本はなってしまいました。刑事罰に問うかどうか は、また別の問題として考えないといけないでしょう。しかしながら、責任を認めて明らかにする。責任の取り方を考える。そして安全神話は通用しないという ことを認識するということは、福島原発の事故から私たちが考えないといけない教訓だと思います。

 

「小出裕章さんに聞く 原発問題」まとめ

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