「石油はいずれ枯渇する」という話はよく聞く。その代替エネルギーを世界は探し求めているが、はたして原子力はその候補となり得るほどの磐石なエネルギーだろうか。原子力の可能性について、京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに聞いた。(ラジオフォーラム)
◆100年もたない
ラジオフォーラム(以下R):原子力発電の燃料であるウランの埋蔵量は、十分に足りているのでしょうか。
小出:地殻の中にあるウランで、現時点で採算を考慮に入れて採掘可能なものは、590万トンだと言われています。去年1年間の使用量が5.9万トンなので、約100年で枯渇することになります。
R:そうすると、決して無尽蔵にあるわけではないということですよね。
小出:もちろんです。むしろ、何で100年分もつかと言えば、現在エネルギー消費全体の中でウランが占めている割合が、せいぜい1割しかないからなのです。もしウランでエネルギー全てを賄おうと思えば、10年でなくなってしまうほどの、まことに馬鹿げた貧弱な資源なのです。
R:昔、日本でも鳥取県と岡山県の県境の人形峠という所で、ウランを一所懸命掘って、たくさんの放射性物質が環 境に出まして、とんでもないことになりました。小出先生もその時の住民の反対運動に協力をされておられたわけですけれども、やっぱりウランを掘るというこ とには、被曝というリスクがどうしても付きまとうものなのでしょうか。
小出:もちろんです。ウランという物質そのものが放射性物質ですので、ウランを掘れば被曝しますし、ウランがあ ると、ラドンという、私たちが「娘核種」と呼んでいる放射性物質も生み出されてしまうのです。昔『ゴジラ』という映画が流れていた時に、ラドンという怪物 がその映画に出てきたことがあるのですが、空飛ぶ怪獣でした。
R:はいはい。私も子供の時に観に行きました。
小出:放射性物質のラドンというのも完全な気体でして、空気中に出てきてしまうのです。ウランが深い地底に眠っ ていれば、そのラドンも地下に閉じ込められているのですが、ウランを掘り出してしまうと、そのラドンも空気中にどんどん飛び出してきてしまうことになり、 人々が被曝してしまいます。
R:人形峠でも、鳥取県の方では、ラドンでかなり被曝をされた方がいましたよね。
小出:いわゆる鉱山では坑道というのを掘って、労働者がその坑道の中に入って行って、ウランを掘ってきたわけで す。坑道の中はラドンが充満していましたので、鉱山の労働者がまずは被曝をしましたし、坑道の出入り口からラドンが噴出してきまして、住民たちの住んでい る集落にも流れ落ちてゆき、住民も被曝をしてしまいました。