◆接近カヌーは転覆
抗議行動をする場所はゲート前だけではない。この日はフェンス沿いを北に10分ほど歩き、海を見下ろすキャンプシュワブの通称「第3ゲート」へ。巨 大なスパット台船が視界に飛び込んでくる。白波が立つリーフ周辺では幾つもの点が動いているのが見えた。抗議のカヌー隊、サポートする小型船、海上保安庁 のボートなどだろう。この日もカヌー隊が海保に拘束されたと聞いた。さびたネットフェンス越しに、「海保は暴力をやめろ」、「カヌー隊頑張れ」などとコー ルが響く。
国は海上に臨時制限区域を設け、フロートで囲んだ。作業用台船はその中にあり、カヌーや船はそれらを乗り越え、台船に近づこうとする。しかし海保は カヌーを転覆させたり、岸から4キロも離れた外洋にカヌーごと放置したり、奪ったパドルを海に放り投げたりと「警備」をエスカレート。命に関わる行為を 「安全確保のため」と抗弁してきた。
第3ゲートでの抗議行動で隣り合わせた男性は、この日で40回目を数える県庁発バスに、30回以上乗ったという。浦添市の65歳。「辺野古の問題 は、沖縄の魂を取られるような本能的なものがある」と話す。「ノンポリで運動経験もない。でも、右も左もなく、自分のような考え方は沖縄では平均的だと思 うよ」。初めてシュプレヒコールもするようになり、「声も大きくなったと言われる」と照れ笑いした。
帰りのバス内はマイクリレー。参加者がそれぞれに感想などを話す。午後5時40分、ほぼ定刻通りに県庁前に帰着した。私はレンタカーを借り、再び夜の辺野古に向かった。
座り込みテントは1月の攻防を経て24時間の常設になっていた。それ以来ほとんどここで寝起きしている人もいる。資材を積んだ車両がいつ来るかわか らない。夜中も警戒が必要だ。ペアで警戒にあたった地元の男性もテント生活を続けていた。「すごいですね」「いまやらなければ戦争になるから」。間髪入れ ず返ってきた。この男性もこれまで運動らしい運動の経験はしていないという。(続く)