米軍普天間基地の「移設先」とされ、埋め立てに向けた動きが加速する沖縄県名護市辺野古。キャンプシュワブのゲート前では24時間の座り込みが行われ、海 上ではカヌー隊が埋め立てへの抗議運動を展開する。「警備」に名を借りた強硬排除を試みる当局に、市民の怒りは収まらない。(栗原佳子/新聞うずみ火)
◆失われるサンゴ
2月7日朝、市民団体の抗議船「平和丸」に乗せてもらった。この日は海上作業が行われないようで、海保のボートも海には出ていない。空は晴れ渡り、 海は鏡のように凪いでいた。「見て。海草(うみくさ)がある」。船長の相馬由里さんが指差した。この海域に住む絶滅危惧種、ジュゴンのエサだ。水中眼鏡で のぞく。ユビエダハマサンゴも手に取るように近かった。
フロートを超えると沖縄防衛局の船やボートが何隻も飛んできた。「制限区域内から出て下さい」とガナりたてる。海域にはフロートのアンカー(重り) として何十トンもあるようなコンクリートブロックが何十個も沈められた。小型の船からも確認できる。一部のブロックが貴重なサンゴを押し潰しているのも はっきり見えた。
午後、キャンプシュワブのゲート前に戻ると、バスで初めて参加した人たちが紹介されていた。幼い男の子を連れた茶髪の父親は「実際に来て見ないとわ からない。子供の未来のためにもまた来たい」。87歳の男性は「軍国主義を嫌というほど叩き込まれた。戦争は今日平和、あす戦争となるのではないのです」 と、切迫感をあらわに訴えた。
◆「沖縄は日本の縮図」
翌8日は早朝からゲート前が騒然とした。シュワブに入ろうとしたワゴン車を市民が取り囲む。海保の可能性が高いという。機動隊が飛んできて市民を車から引きはがそうとする。一触即発の一幕だった。
午後、同じゲート前では北中城村のフラダンスのチームが踊りを披露してくれた。この場所では拳も突き上げるが、歌や踊りも身近にある。
ここで前々日、バスの後部座席にいた男性を見かけ、話しかけた。「おとといもいらっしゃいましたね」。「いや、5日連続」と、右手を広げる。どんどん強行される作業。「ここに来ないと心配で仕事が手につかないよ」。
61歳。南部の町から毎日県庁前まで通っているという。5年前の知事選では「県外」を公約にした仲井真氏に期待を込めた。いまは「ぶん殴りたい」そうだ。礼を言い立ち上がろうとした私を、彼は「ちょっといいか」と呼び止めた。
「沖縄は縮図だ。いずれは日本に来るよ。これ(辺野古)やられたら、どこでもやられる。自覚してほしい」
(栗原佳子)