2014年12月に原子力小委員会から出された中間報告が物議を呼んでいる。この報告が、委員たちの議論の結果より、政府の意向を色濃く反映したものに仕 上がっているからだという。この問題について、京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに聞いた。(ラジオフォーラム)
ラジオフォーラム(以下R):この中間報告には原発に肯定的な表現が委員会事務局によって書き足されていると、委員の一人である原子力資料情報室の伴英幸さんも憤っておられるそうです。小出さん、この中間報告はご覧になっていかがでしたか。
小出:はい。日本というこの国はいわゆる官僚国家なのだなと思いました。
R:やっぱり、相当前のめりになっているような表現が多いのでしょうか。
小出:はい。そうした表現がもちろん各所に散りばめられているわけです。ただし皆さんご承知の通り、福島第一原 子力発電所の事故が事実として起きたわけで、従来通りのような表現はとりにくいところも当然あったわけです。それでも、福島の事故があっても、なおかつ変 わらずに原子力を推進したいという彼らの希望というか、原則的な姿勢というものが、しっかりと出ている報告書になっています。
R:他にも、「原子力はベースロード電源だ」という言い方とか、「地球温暖化対策への取り組みは国際的な課題だ」というような表現が書き足されたというふうに言われていますが、小出さんが読まれて、特に気になった箇所というのはありますか。
小出:要するに、今ご指摘があった通りです。「原子力がベースロードだ」とか「温室効果化ガスを減らさなければいけない」「地球温暖化対策だ」というような、彼らが昔から言っていたことが全く何の反省もないまま、同じようにここに書き込まれているのです。
ベースロード電源と言いながら原子力を進めてきて、福島の事故を起こしてしまったわけですから、その反省を彼らはすべきだと思いますし、本当ならば 彼らが責任を取って、何がしかの人は刑務所に行かなければいけないという立場の人たちだと思うのです。けれども、一切の反省もしなければ、一切の責任も取 らないまま、今まで通りの方策をどうやったら続けていかれるかということで、この報告が書かれています。
R:いわゆる再稼働への慎重派の委員というのは、原子力資料情報室の伴英幸さん以外におられるのですか。
小出:私はこういう委員会というのは、いわゆる政府の推進のための隠れみのだというふうにずっと思っています。 こういう委員会には、誰が行っても決して意見は通らないと思っていて、一切関わらないと私自身は宣言してきたのです。ただ、伴さんもそうですし今、九州大 学の吉岡(斉)さんもそうですけれども、中に入って戦おうという方が何人かいらっしゃる。ただ、残念ながら、そういう方々の努力はなかなか実ることがな い。委員会というか、政府の諮問機関は全てそうだと私には見えます。少なくとも原子力に関する限りは、どなたが行っても意見は通らないと私は思います。
R:中間報告書の方向性を見ると、老朽炉の取り壊しについて、この間も5つ廃炉にすることを決めたというような話が出てきましたが、その代わりに、新しい炉を建てるという話も出ているんですね。
小出:そうですね(笑)。