東京電力福島第一原発事故から4年が過ぎた。廃炉が一気に5基決定されるなど、日本の原子力産業は大きな岐路を迎えている。その一方で、事故に対する責任 を誰も問われないまま再稼働への動きを強めている。そうした無責任、無反省な体質を持つ「原子力ムラ」について、京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さ んに聞いた。(ラジオフォーラム)
◆ 原子力マフィアとは
R:実は小出さんは、いわゆる原子力ムラのことを最近は「原子力マフィア」と呼ばれておりますが、これはもう「ムラ」ではダメだという意味、マフィアレベルだということでしょうか。
小出:はい。ムラというのは、いろいろな人たちが集まってつくるものですね。政治の世界の人、産業界の人、山ほどいろいろな人が集まって、原子力を一体となって進めてきたわけですので、ある意味、原子力ムラと呼べるような組織だったのです。
R:原子力に関係する各業界の人たちが一つの「ムラ社会」を形成したのですね。
小出:ただし、福島の事故を引き起こした責任はその人たちにあると私は思っているのですけれども、その人たちは 誰一人として責任を取らない、処罰もされないという形になっています。私はそれで気が付いたのです。いわゆる原子力ムラと呼ばれてきた人たちというのは、 巨大な権力機構になってしまっていて、それ自身が犯罪を犯しても誰も処罰をされない組織なのだということを。
そういう意味で、もう単なるムラではなくて、いわゆる犯罪者集団だと私は思うようになりましたので、原子力ムラではなく「原子力マフィア」と呼ぶようになりました。
◆ 幻想だった「平和利用」
R:小出さんは原子力工学に夢を持ってこの世界に入られたということですが、1953年にアイゼンハワー大統領が「原子力の平和利用」ということを言い出して、原子力平和博覧会というのを日本でやるわけですよね。
小出:そうです。「Atoms for Peace」という発言で、何か原子力が平和利用できるものだというような幻想が世界中に振りまかれてしまいました。私が子どもの頃で、そういう振りまか れた幻想の下で私自身も大きくなりました。残念だし恥ずかしいですけれども、私自身も原子力の平和利用というものに夢を抱いてしまいました。
R:これは幻想なんだと気付かされたきっかけをお聞きしたいのですが、小出さんはどういうことで「これは違う」と思われましたか。
小出:いろいろありましたけれども、私が原子力に夢を抱いて「原子力発電をやりたい」と思い込んで、東北大学の 原子核工学科にいた頃に、東北電力が原子力発電を始めるということになりました。私は初めそれを歓迎したのですけれども、建てられる場所が、私がいた東北 地方の最大の都市の仙台ではなくて、女川という本当に小さな町に原子力発電所を建てるということになりました。