◇ 布告によって厳格な取締りが始まった
さて、それでは布告が発布されて以降、現実にどのような統制強化措置が取られているのだろうか? 北朝鮮の中部地域に住む協力者から届いた報告を紹介したい。
2月4日に布告が発表されてからは、すべての運転手に対し、免許証級数試験を受け直すように指示が下された。過去、4級の免許資格を持つ者が賄賂を 払って2級に引き上げてもらうなど、高水準の運転技術があるように見せかける行為が横行していた。それにも関わらず事故がたくさん起きているので、布告文 の公布と共に、再審査を始めるということだ。
北朝鮮では免許証1級と2級の資格は、自動車の設計、製作、修理をすべて行える程の技術が求められる。3級は貨物車の運転手、4級は運転補助員という扱いになるが、これまでは4級資格しか持たない者が貨物車を運転するケースが多かった。
また、市場経済式営業の乗合バス「サービ車」や、個人商売人の荷物を積んだ貨物車など、実質的に個人が所有している車両に対して一斉に調査を始めたため、道を走る車は減り、走っていても荷物を空にして走っている有り様だ。
大きな十字路ごとに交通保安員たちが2、3人ずつ立ち、通行する車両はオートバイまで含めて全て停車させて調査、取締りを行っている。
この際、実際には個人所有の車であるにもかかわらず、企業所所有にように偽装登録された車は無条件で没収されている。また近々、集中検閲グループが組織され、機関・企業所に国から割り当てられた車両以外はすべて没収措置が取られるという。
このため、現在、個人所有の車で「サービ車」などを運営し金儲けをしている人々は、焦りと恐怖で混乱し、賄賂を使ってなんとか乗り切ろうとしている。だが、今回ばかりはその方法も通じないだろうという見方が強い。
今回布告文が発表された理由は、平壌と元山(ウォンサン)を結ぶ高速道路で、貨物車と乗用車が衝突し、多数の死者が出たためだといわれている。死者には幹部も含まれていたという噂だ。
自転車に対する取締りも強まっている。家の前の道を走るだけでも、自転車免許証と自転車登録番号の有無をチェックされ、違反者は罰金を科せられ自転車を没収されている。これを避けるため、最近では地元の警察署に自転車を登録しに来る人が増えたという。
一般の人々はというと、車両を使って大がかりな商売をして金を儲けた人たちが、交通秩序に違反したり事故を起こしたりしたで、自転車にしか乗れない貧しい庶民への統制が強くなったと感じ、不満を募らせている。(終)
◆ 下記記事より、布告文全文がお読みいただけます。
<北朝鮮>金正恩氏の布告全文と解説(1) 交通秩序強調は首脳部安全のため?