恵山-平壌区間のこれまでの運賃は、アジアプレスの調べによると1500ウォンであった(2013年9月当時、約0.57ドル。実際はこの2-3倍を上乗 せしないと切符購入は困難)。現在の8万5000ウォンというのは、実勢レートでは約10ドル(1200円)価格であり、これは北朝鮮の市場で白米20キ ロに相当する価格だ。トウモロコシなら40キロ。3人家族が一か月程度、食べていける値段だ。ディーゼル機関車路線を一般住民が利用することは不可能に近 い。
電気はもちろん、石油類も不足している北朝鮮で、ディーゼル機関車の運行が水力発電麻痺で電力不足が激しい冬季にだけ行われるのか、現時点ではまだ明らかになっていない。
一方で、こうした動きは老朽化した鉄道を現代化させようという北朝鮮当局の動きなのか注目される。昨年11月29日、『ロシアの声』放送は、北朝鮮 当局がロシアから250億ドルの資金を誘致し、3500キロに及ぶ北朝鮮全域の鉄道の現代化を進める予定だと伝えた。また、10月21日に朝鮮中央通信 は、平壌市内の「東平壌」駅において、北朝鮮とロシア高官の参加の下、「梓洞(チェドン)-江東(カンドン)-南浦(ナムポ)区間鉄道改建着工式」が行わ れたと報じている。
ロシア主導の鉄道復旧事業が、実際に進捗するのかどうかは予断を許さないが、北朝鮮において、鉄道路線の復旧と現代化が経済の今後を左右する重大な 分野であることは間違いない。北朝鮮は全体の貨物輸送の九割を鉄道に依存しているため、毎年初に金正恩氏によって発表される「新年辞」においても、「鉄道 は国家の動脈であり、人民経済の先行官(最先端)である」という文章が登場するほど、鉄道復旧の優先度は高いからだ。
人民生活の改善を声高に語る金正恩政権の経済政策も、鉄道の活性化なくしては考えられない。今回のディーゼル機関車導入の意図が、冬季を乗り切る短期的なものなのか、鉄道リニューアルを視野に入れたものなのか注目される。