「ISは必ず破綻する」
武装組織「イスラム国」(IS)戦闘員だったアリ・ハラフ(26)は、クルド部隊ペシュメルガとの戦闘中に拘束され、収監された。質問に淡々と答えていた彼だったが、家族の話になると言葉を詰まらせた。「斬首処刑を繰り返す非情な集団」というイメージと裏腹に、人間的な表情をのぞかせた元戦闘員。普通の市民だったイラク人青年を、過激な武装組織へと駆り立てたのは、アメリカによって始まったイラク戦争でもたらされた混乱と、イラクのマリキ政権によるスンニ派への過酷な対応、そして貧困だった。【取材:玉本英子】
◆市民生活はどういう状況か?
アリ:学校は小学校から高校まで、みんな通っているが、勉強の内容はイスラムの授業が中心になった。店も物価が高騰しているが、ふつうに物が並んでいる。病院も開いているが、いい医師はすでに逃げ出し、若い医師が残っているだけだ。女性たちは外出するとき、顔や全身を黒いヒジャブで覆わなければならない。もし顔などを出した女性がいたら、その夫は公衆の面前で殴られることになる。自分たち戦闘員はイスラム系のテレビしか見なかったが、一般家庭では家の中で衛星放送が見られたので、アル・アラビアなどのアラブ系のニュースチャンネルを通して、情報を得ていたと思う。
◆ヤズディ教徒(ヤジディ)の女性たちが「戦利品」としてISの戦闘員に売られたことは知っているか?女性たちを見たことはあるか?
アリ:知っているが(ヤズディ女性を)直接見たことはない。外国人の戦闘員が買っていると聞く。自分も含め、地元の戦闘員はすでに結婚していたし、地元の女性たちと付き合えるので必要がないが、外国人戦闘員は、地元女性と出会う機会もないので、ヤズディ女性を買っていたのだと思う。
◆公開処刑を見たことがあるか?
アリ:自分は戦闘員だが、公開処刑執行に参加したことはない。見る機会もなかったので、なんとも言えない。刑の執行者を指名するのは宗教裁判所だと聞いたことがあるが、よくわからない。
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