◇常態化していた停電も少し改善か
昨年11月から全国的に深刻な停電が続いていたが、電気事情も若干の好転が見られるようだ。
まず、電力難がどれだけ深刻だったが、昨年末から届いていた各地からの情報を整理して紹介しておきたい。
「チカともしない。電気が一秒も来ない日が当たり前になって、慣れてしまった。」
(両江道の農場幹部)
「晩はずっと真暗闇です。金持ちは中国製の自家発電機使っているが、庶民はロウソクか石油ランプ使っている」(咸鏡北道の労働者)
大都市も同様であった。第二の都市・咸鏡南道咸興(ハムン)の住民は、昨年末に次のように伝えてきていた。
「朝鮮は今、国中が停電のようなもの。携帯電話の充電もできない有様だ。工場、企業所にも電気供給はずっと止まってる」(咸興市の商売人)
優遇される平壌市も電気事情は酷かったようだ。
「この冬は悪いですね。一日3-4時間程度しか電気来ない。」(平壌大同江区域の住人)
韓国統一部の推定した統計によれば、この数年間、北朝鮮では発電量の五割以上を水力が占めきた。残りの火力発電に用いられるエネルギー源は、ほとんどが国産の石炭だと考えられる。
北朝鮮では毎年冬に電力事情が悪化する。秋の少雨とそれに続いて川が凍ってしまうのが理由だが、昨年末からの電力難が例年よりずっと深刻だったのは、発電に回す石炭の量が減ったためだと見られる。
石炭は北朝鮮の外貨稼ぎのトップ品目だが、2014年は国際価格の下落によって、最大の輸出相手である中国への石炭輸出額は17.6%減少している(韓国貿易協会2014年度統計)。
価格下落を補うために、発電や国内消費に向けられていた石炭を無理に輸出に回したため、電力事情が極度に悪化したものと思われる。
取材協力者のペク・ヒャン氏は次のように言う。
「凍っていた川の氷が解けて、3月25日から日中も晩も電気が来るようになった(1日の供給時間は不明)。しかし、水道は相変らず麻痺していて、『水苦労』を強いられている」
4月に入った今、北朝鮮北部地域の庶民は、なんとか一息つけた状態のようである。