R:廃炉を含めた核廃物処理の専門家の育成が必要だということですが、現状、そうした専門家の育成は進んでいるのでしょうか。
小出:昔の大日本帝国時代に日本には7つの帝国大学がありました。北から北海道、東北、東京、名古屋、京都、大 阪、九州です。もともと私が原子力に夢を託した時代というのは、これら7つの元帝国大すべてに原子力工学科、あるいは原子核工学科というのがあり、積極的 に原子力を推進していました。
時代が移ってきまして、原子力にかけた夢が次々と敗れていく中で、いつしか7つの帝国大学には、原子力工学科も原子核工学科も一つもない状態になってしまいました。ですから、もう原子力に関する学問自身が崩壊してしまっているのです。
R:そうなのですか・・・・・・。
小出:はい。そうして今、その愚かな夢をかけたがために生み出してしまった放射能のゴミが大量に残っていますの で、その始末をつけるという仕事は残っています。始末のつけ方としては、放射能そのものを消すという方法が一つです。ただ、それは大変難しくて、70年以 上研究を続けてきたのですけれども、未だに実現できないという困難な研究です。それでも、やはり続けるべきだと私は思います。
もう一つは、消すことができないなら、閉じ込めるという方向の研究です。現在、世界では、消すことができないならどこかに閉じ込めよう、大半は地下 に埋め捨てにしようということになっています。けれども、本当にそういう方法が安全かどうかということをきちんと考える学問は、やはりつくらなければいけ ないと思います。
R:なるほど。今後、そのような学問をやっていく人材が、好むと好まざるとにかかわらず必要になると。ではそうした研究を進めるには、どのような場所が最適なのでしょう。
小出:まあ、非常にファンダメンタルなことからやらなければいけないわけですから、当然、企業が金儲けのためにそういう研究をするということは実質上ないと思いますので、やはり大学というような所でやるしかないと思います。
R:小出さんからご覧になって、この大学、この研究機関でやっている人たちに可能性を感じる、というような所はありますか。
小出:残念ながらありません。これまでの原子力という世界は、いわゆる巨大な国策の下で全てが動いてきたわけで す。大学という所も原子力を推進するという国策に協力してやってきたのです。ですから、ほとんどの学者は、原子力の旗の下に集まって原子力を推進してきた 人たちなのです。私は、もうそういう世界から足を洗わなければいけないと思っています。これまで原子力を担ってきた人たちは、綺麗さっぱり皆さん引退すべ きだというぐらいに思っています。
R:なるほど。一からやり直さないと難しいということですね。
小出:そう思います。
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