◆ 作業員に生活保障を

R:作業員をどのような形で確保していくかということも、実は重要な課題ではないかと思うのですが。
小出:はい、大変な問題だと思います。チェルノブイリ原子力発電所の事故が起きた時には、60万人とも80万人とも言われるほどの労働者を確保しなければなりませんでした。軍人、退役軍人、普通の労働者、あるいは一部には囚人もいたそうですけれども、とにかく被曝をしながら、大量な労働者で作業にあたったわけです。

今、日本ではオリンピックなどに浮かれていて、そちらの建設作業に多くの労働者が吸い上げられてしまっているわけですけれども、それどころでは本当はないわけです。きちんと福島の事故に対処するための労働者というものを確保しなければいけない、と私は思います。

R:では実際にどうやって労働者を確保したらよいのでしょうか。東電や国に何か考えがあるようにも思えませんが。
小出:大変デタラメな国だと私は思います。現場で働いている労働者は当然、東京電力の社員ではありません。まず元請が東京電力から仕事を請負いまして、ピンはねした上で次の下請けに仕事を下ろす。そして、次々にピンはねをしながら下請けに仕事を下ろしていくわけで、7~10次というようなものすごい下請け構造の中で、現場で働く人たちがかり集められているのです。

東京電力が払った賃金が次々とピンはねされていって、労働者の手に入る時には最低賃金にも満たないというような本当に劣悪な状況の下で労働者が今、集められています。そして、私が何よりも問題だと思うのは、被曝作業には被曝の限度というものが決められていますので、その限度に達してしまうと、その労働者は首を切られてしまうのです。

労働者の方としては、何とか自分の被曝を値切って、あまり被曝をしていないのだというふうに見せかけなければ、首を切られて生活が成り立たなくなってしまうわけです。被曝作業に従事する労働者に対しては、きちんとした雇用関係の中で生活を保障するというような体系を作らなければいけないと私は思います。

小出裕章さんに聞く 原発問題

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