2015年4月、高浜原発3、4号機に関して福井地方裁判所が再稼働差し止めの仮処分を認めた。この3、4号機は、危険なMOX燃料で原発を稼働させるというプルサーマル計画のための原子炉だった。プルサーマル計画に関して、京都大学原子炉実験所OBの小出裕章さんに聞いた。(ラジオフォーラム

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん
ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

◆毒性20万倍のプルトニウムを使用

ラジオフォーラム(以下R):鹿児島県の川内原発3号機、そして福井県の高浜原発3、4号機ではプルサーマル計画が予定されていますが、今一度、このプルサーマル計画で使用されるMOX燃料というものについてお聞きしたいと思います。
小出:普通の原子力発電所はウランを燃料にしているのですが、そのウランにプルトニウムを混ぜて燃料にしたものがMOX燃料と呼ばれているものです。

R:普通のウラン燃料棒でも非常に危険なものですが、このプルトニウムを混ぜたMOXの燃料棒というのは、普通のウラン燃料棒の何倍ぐらい危険なものなのでしょうか。
小出:倍率でお答えするのは大変難しいのですが、例えば、ウランが持っている放射線の毒性と、プルトニウムが持っている放射線の毒性を比べれば、約20万倍危険です。

R:20倍じゃなくて、20万倍ですか。
小出:そうです。

R:この危険なMOX燃料を高浜原発では使おうとしているということですね。
小出:はい。

R:今、核のゴミが大きな問題になっていますが、MOX燃料の場合は、やはりウラン燃料棒よりも、さらに長い期間、保管しておかないと安全にはならないのでしょうか。
小出:はい。原理的には当然そうなります。ごく短い間の保管ということに関しても、日本の普通の原子力発電所でできた使用済み燃料というのは、数年後には再処理工場に運べるという程度の発熱ですが、MOX燃料の場合には、ウラン燃料に比べて発熱量が高いので、恐らく数年ではなくて、数十年間は原子力発電所の敷地から動かせなくなると思います。

R:通常でも数年置かないといけない物をMOXの場合、数十年ですか。福井県では地震も起こりますし、高浜原発は相当の危険を覚悟しなければなりませんね。
小出:そうです。もともと普通のウランを燃やす原子力発電所でも危ないのですから、それにプルトニウムを混ぜるというようなことをすれば、より危険が増えてしまう。そのことはもう争う余地がなく当たり前のことです。

 

◆経済的にも技術的にもすでに破綻

R:MOX燃料の輸入価格は、通常のウラン燃料の9倍も高いと聞きましたが、これは本当でしょうか。
小出:本当です。ですから、やればやるだけ電力会社は負担を強いられます。

R:その負担は、総括原価方式によって、燃料の一部は電気料金に転嫁するのですよね。
小出:当然です。電力会社としては何の損もしないのですけれども、その分、私たち消費者が負担させられるということになります。

R:MOX燃料が普通のウラン燃料よりも9倍も割高なのは、やはり造るのに非常に高度な技術がいるからなのでしょうか。
小出:はい。プルトニウムという物質は、天然には全く存在せず、原子炉を動かして造らなければいけないのです。それを再処理で取り出すという作業も、当然しなければいけないのです。

R:その作業は本来、青森県六ヶ所村でやるということになっていますよね。
小出:はい。その予定でしたけれども、六ヶ所村の再処理工場はトラブル続きで、まだ動いていないのです。とても難しい技術ですし、大きな危険を伴う技術ですので、なかなか上手くいきません。何とかやったとしても、膨大なお金がかかってしまって、そのプルトニウムを使うと燃料代が上がってしまうということになります。

R:何も良いことないですね。
小出:何も良いことないのですけれども、この日本という国ではプルトニウムを取り出して、未来の原子炉でそれを燃やして燃料にすると言ってきたのです。そのために日本では「もんじゅ」という小さな実験用の高速増殖炉を作ったのですが、これも全く動かないのです。そのため、高速増殖炉で燃やすために海外で取り出してもらってきたプルトニウムが、使い道のないまま余ってしまっています。そのプルトニウムというのは、長崎に落とされた原爆の材料でして、現在、日本は高速増殖炉の燃料に使うとして、47トンのプルトニウムを保有しているのですけれども、それで長崎型の原爆を造ってしまうと、4000発分もできてしまいます。

R:4000発分ものプルトニウムですか。
小出:はい。そんなプルトニウムを使い道のないまま持っておくということは当然、他の国から見れば大変な脅威になるわけです。日本というこの国は、使い道のないプルトニウムを持たないと国際公約させられているのです。でも、「もんじゅ」を含めて高速増殖炉が全く動きませんので、とにかく何としても燃やしてしまわなければいけない。そのためには危険を承知で、そして経済性も全くないことを承知の上で、普通の原子力発電所で燃やしてしまおうということになってしまったのです。

現在、プルサーマル計画で、高浜原発であるとか玄海原発であるとか、あちこちで、そのプルトニウムを燃やそうとしているのです。それでも、現在は炉心の中の全部の3分の1までしかプルトニウムを入れてはいけないということになっています。そうすると、燃やせるプルトニウムの量が限られてしまいますので、なんとか大量に燃やせる原子炉を造らなければいけない。ということで、大間という所の原子炉が生まれたのです。

R:今、青森県に造られようとしている、フルMOX燃料で稼動する大間原発のことですね。
小出:福島の人たちは大変な苦難の底に沈められた状況のわけですけれども、大間原子力発電所で同じような規模の事故が起きる、あるいは六ヶ所村の再処理工場でさらに大きな事故が起きる可能性もあるわけです。そういう事故のことはあまり想像したくありませんけれども、でも、人間が望むと望まざるとにかかわらず事故は起きるわけですから、覚悟はしておかなければいけないと思います。

R:はい。絶対に、やめさせなきゃいけませんね。

小出裕章さんに聞く 原発問題

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