◆イラン・イラク戦争時の戦死兵~両手を縛られ、生き埋めか 今月17日、イランの首都テヘランで、大規模な追悼式が催された。イラン・イラク戦争中に戦死したイラン軍兵士270名の遺体が帰還し、市民数万人がイラン国旗に包まれた兵士たちの棺を出迎えた。イランの各メディアが報じた。
今回帰還したイラン兵の遺体は、今年5月にイラク領内で発見された。戦後30年以上が経過した今も、イラン・イラク国境周辺では、両国による戦没兵 士の遺体発掘作業が続けられている。270名の遺体のうち175名は潜水兵で、1986年の第4次カルバラ作戦の際、ペルシャ湾に近いアルヴァンド川 (シャットルアラブ川)の渡河作戦に参加した兵士とされている。
彼らは潜水服を着たまま、両手を縛られた状態で発見された。一部の遺体を検死した結果、外傷がまったく見つからないことから、生き埋めにされた可能性が高く、イラン国民に改めて生々しい戦争の記憶と、死地に赴いた若者たちへの哀悼を呼び起こしている。
◆式典では政権批判も噴出
追悼式が行われたバハーレスターン広場では、政権批判と思われる、『彼らは、お前たち(イランの政治家たちを指す)が両手を広げて盗みを働くために、両手 を縛られ死んだのではない』などと書かれたプラカードを掲げる市民の姿が見られた。ニュースサイト・パルスィーネが伝えたところでは、この式典の演説者の 一人は、「イスラム体制にあって、我が国の政治家たちは外国へ行っては好き放題にやっている。彼らは外国の外交官の前で高価な服で自らを装い、相手のご機 嫌を伺い、交渉(核交渉を指す)をする。くそ食らえだ」と発言し、聴衆の抗議を受けたという。
イランで「政権批判」を繰り広げるのは改革派ばかりではない。今では、イランの現体制の強力な支持母体である、イラン・イラク戦争の退役軍人会や戦没者遺族団体等の保守勢力の間に、政権への強い不満がくすぶっている。
イラクでフセイン政権が倒れると、イランは仇敵であるイラクの強力な支持国の一つとなり、またアメリカとも同じ核交渉のテーブルにつき、あたかも雪 解けの時代を迎えようとしている。最高指導者ハーメネイー師が全面的に支持し、国策として推し進められている核交渉と交渉チームへのあからさまな中傷は、 現状への彼らの不満と危機感、そして「我々はなんのために命をかけて戦ったのか」というやり場のない怒りの現れに他ならない。(大村一朗)