イラク北西部の村で武装組織「イスラム国」(IS)に拉致され、シリアの少年軍事訓練所に入れられたヤズディ教徒(ヤジディ教徒)の子どもたちは、イスラム教に強制改宗させられ、毎日コーランの勉強と銃の扱い方などを覚えさせられた。教官はISの処刑映像などを何度も見せたという。3月に脱出したダハム君(仮名14)に避難先のイラク北部で話を聞いた。【玉本英子・2015年4月】(全3回)
◆訓練所で何を教えられたの?
ダハム:毎日厳しい日課があって、コーランの勉強のほかに、いろいろな武器の使い方を学ばされた。カラシニコフ銃の扱い方や撃ち方も教えられた。
訓練所を視察に多くの戦闘員がやってきた。スーダン人、ロシア人、アラブ人、アメリカ人、ドイツ人もいた。僕たちは普段シャツとズボンを着ていたが、見学者が来たり、撮影の時などは迷彩色の戦闘服を着せられ、頭に黒の鉢巻をつけなければいけなかった。
あるとき、教官に弟と戦うことを命じられたことがあった。本気で戦わないと殺すと言われた。僕は弟と素手で戦い、顔を殴って歯を折ってしまった。「お前たちはペシュメルガと戦うのだ、殺すのだ」と毎日教えられた。
【※ペシュメルガ=イラク・クルド地域の防衛部隊】
◆残酷な殺人について彼らはどう言っていた?
ダハム:授業ではISのビデオを何本も見せられた。たくさんの処刑映像を見た。捕まった人はみんなオレンジの服を着ていた。日本人人質については何も聞かされなかった。2月にはヨルダン人パイロットの処刑映像を見た。人が生きたまま焼かれているのを見てショックだった。
「クッファール(アッラーを信じぬ者)だから殺された」と教官は正しいこととして話した。僕はここにはもういられないと思った。この悲惨な状況から生きて抜け出すと心に決めた。
訓練所では教官は「バグダディは我々のアミール(司令官)で、命令は何であっても従わなければならない」と言っていた。ジハード(聖戦)について「命を差し出す者は天国に行ける」といつも聞かされた。それに同意したりする子どもたちはいなかったと思うけど、毎日毎日言われていたし、もし、薬など与えられたりしたら判断力がなくなって、本当にジハードをやってしまう子が出てくるかもしれない。(つづく)