◆ 勝ち取った「抑止力」
R:40年近くに及んだその調査活動の成果とは何だったのでしょうか。
小出:調査を始めてすぐに、伊方原子力発電所の前面の海では、放水口側の湾の方に放射性物質が溜まってくるということがわかりました。すぐに、彼らは自分たちの生活している海が汚れているということを公表しました。彼らにとっても苦しい公表だったと思います。
その一方で、四国電力も証拠を突きつけられてしまいましたので、恐らくそれ以降、放射性物質をなんとか流さないようにしようという工夫をだんだん強化していったのだと思います。当初は結構汚れていましたが、調査を続けていくうちに、徐々に汚れが少なくなってきました。
30何年も調査してきましたけれども、もう最近では私が測定しても海の汚染がほとんど見つからないというぐらいまで減ってきています。それは、住民自身が調査をすることで、初めて電力会社にプレッシャーをかけて、放射能を出させないようにしてきたということだと思います。
R:長年の調査が抑止力になったということですね。
小出:はい。訴訟では原発設置を止めることは出来ませんでしたが、その後の環境汚染ということに関しては、大きな抑止力になったと思います。
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原発の安全論争の原点とも言われる伊方原発訴訟。原発の設置は止められなかったが、地元の若者たちの、郷土の海を守りたいという強い思いと地道な調査活動 が、その後の海の汚染を食い止めた。この事実はあまり語られていないが、住民主体の環境保護の歴史において、一つの大きな功績と言えるだろう。
※小出さんの音声をラジオフォーラムでお聞きになれます。
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