◆銃弾が飛んでいなければどこまでも行くという考え方に
昨年7月1日の閣議決定による解釈改憲の問題で、いったい何が変わっていこうとしているのか。
まず、一体化論という問題です。これまでの政府見解はドンパチやっている外国の軍隊と自衛隊が密接に関わってしまえば、仮に自衛隊が武力行使していなくても自衛隊の活動は憲法違反になるという考え方です。
何を目安に一体化したか、しなかったかというと、活動内容です。外国の軍隊に武器弾薬を運んでいたら一体化したと見なされ、司令官と密接に連絡を取って指揮・命令系統の中に入って組織的に一体化したということになります。
さらに、地理的関係も重要です。前線なのか後方なのかという区別、あるいは戦闘地域か非戦闘地域かという区別。この区別があるために、ぎりぎり自衛隊が行う活動は外国の軍隊と一体化しないから合憲であるというのが従来の政府見解でした。
今回の法案では、「現に」戦闘行為が行われている現場ではないところまで行くという考え方を取り、従来の前線・後方という区別とか、戦闘地域・非戦闘地域 という区別を撤廃してしまったのです。一体化論の考え方自体は残っていますが、線引きをやめてしまおうという考えを取りました。そのために、銃弾が飛んで いなければどこまでも行くという考え方になったのです。
当然ながら外国の軍隊がドンパチやっている真っ只中に自衛隊は行きますから、戦闘行動に巻き込まれることになります。法案の内容では、そうなったら 支援活動をやめて撤収するということになっていますが、そこにいたるまでに外国の軍隊と連絡調整をして「自衛隊はここをやってくれ」と言われて行っている わけです。
そこまで連絡調整した上で行っているにもかかわらず、「じゃあ、俺たちは帰る」と帰ってしまったら、むしろ国際的な信用を失います。 また、後方支 援といっても、相手を叩く時には兵糧攻めをするのが一番効果的なのです。ですから、せっせと運んでいるところを攻撃した方が効果的です。後方支援をやって いる自衛隊が最も狙われやすい性格を持つわけです。そういったことを、しかも前線まで行くとなると、必然的にリスクが高まるわけです。(つづく)【矢野 宏・新聞うずみ火】
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