武器使用の権限拡大が今回の法案のもう一つの柱になっています。武器使用の権限拡大に関してどんな問題が考えられるのか。
「武器等防護」に関係して、米軍の武器を守れるようにするのが法案の柱になっています。従来は自衛隊の武器を守るためと限定してきましたが、「米軍 と自衛隊の武器をグレーゾーンから守る」とはっきり言っていますから、そこで何かあったら、戦闘行動に移るという流れになるわけです。
自衛隊の施設が攻撃を受けたら自衛隊は個別的自衛権で対応する。米軍の武器が狙われたら集団的自衛権で対応するということになりますので、グレー ゾーンから個別的自衛権、グレーゾーンから集団的自衛権、さらには個別的自衛権から集団的自衛権と、政府のいう切れ目ない行動が可能になっていくと思いま す。
さらに、「駆けつけ警護」の武器使用を認めること、「任務遂行型」を幅広く解禁するという考え方に大きく変わっていこうとしています。
「駆けつけ警護」は、外国の軍隊がすでに戦闘に巻き込まれていて、たまたま近くに自衛隊がいる。自衛隊が攻撃を受ければ個別的自衛権で対応できるのです が、攻撃を受けていないからできない。戦闘に巻き込まれに行って、「よし反撃するぞ」と攻撃するのが駆けつけ警護です。従来から認められておりませんでし た。戦闘に自分から巻き込まれに行くのですから、自衛隊は当事者になります。
「民間人を保護することもやる」と言っていますが、民間人をどこまで救うのかとなると、判断が必要となります。例えば、自国民だけなのか、そうじゃ ないのかという問題。現地の国民が襲撃されたらどうするのかという問題。武装勢力が国民に紛れ込んで入ってくる可能性についてどう考えているのかという問 題。様々な問題がある中で、国会審議はほとんど行われていない状況です。
「他国の部隊が救援を求めてきたら当然行くべきだ」という意見も聞こえてきますが、外国の軍隊のあり方を見ると、当然ではないのです。外国の軍隊が 出て行く時には厳密に武器使用のルールを決めています。ルールから逸脱して、現場の判断で武器を使うことは許されていません。他国の軍隊が助けを求めてき ても、最初に盛り込んでいなければむしろ行かないのが軍事の常識です。自衛隊も行くべきではないのですが、感情論で突っ走る今の法案の審議には大きな問題 があると思います。(づつく)【矢野 宏・新聞うずみ火】