脱北者流入防止のために、豆満江の中国側全域には鉄条網が張られている。2012年8月撮影アジアプレス
脱北者流入防止のために、豆満江の中国側全域には鉄条網が張られている。2012年8月撮影アジアプレス

今年は敗戦から70年、日韓国交正常化から50年。日本による侵略と戦争に対する歴史認識と、悪化した韓国との関係の修復が毎日のようにメディアで 論じられている。だが、そこに北朝鮮への視線はほとんど見えない。北朝鮮との間には拉致問題しかないかのごとくである。北朝鮮地域に暮らす人も、皇国臣民 にならされ、様々な戦時動員に駆り立てられていたことを忘れてはならない。

この隣人と、日本がまっとうな関係を作れないまま100年以上が過ぎた。植民地期は支配者と被支配者の関係だった。冷戦下では互いに敵対する陣営に あり、その後も北朝鮮の核開発と拉致問題のため対立は溶解せず、国と国は交わりなきままである。さらに、2000万の民は三代世襲独裁政権の下で長く閉じ 込められており、会うこと、話すことを望んでも叶わない。

もう植民地時代を記憶する脱北者と出会うこともなくなってしまった。多くが亡くなり、川を越境する体力もないためだ。北朝鮮の民衆の過去と現在と未来と、日本はどう向き合うのか。節目の年だからこそ考なければ。無視は罪だ。

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