安倍首相が8月に戦後70年の談話を発表するのに先駆け、関西の市民団体でつくる「戦後70年 東アジアの未来へ!宣言する市民」が7月7日、大阪市中央 区のドーンセンターで集会を開き、市民の手による「宣言」を発表した。安倍政権の「積極的平和主義」を批判、加害と侵略の事実を見つめ、次の70年、東ア ジアの人びととともに平和な未来を目指すとする内容だ。(栗原佳子/新聞うずみ火)
今年は戦後70年、日韓条約50年、村山談話20年という節目。5月に市民団体のネットワークを結成、「宣言」の文面を検討してきた。
この日は78年前、日本が盧溝橋事件を契機に中国への全面的な戦争を開始した日。集会の冒頭、呼びかけ人を代表して挨拶に立った在日中国人2世で「靖国合 祀イヤですアジアネットワーク」の徐翠珍さんは「7月7日という日に『市民宣言』を出す意味を皆さんと一緒に深く心に刻んでいきたい」と述べ、「中国の上 海で生まれ育った母から、日本軍に追われ逃げ惑ったという話をよく聞かされた。母は幸い九死に一生を得て日本に渡り生活してきたが、日本人を『日本鬼子』 『東洋鬼子』などと言った母の記憶は死ぬまで脳裏に刻まれ、消えることはなかった」と振り返った。
朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪の大村和子さんら3人が宣言文を朗読したのに続いて、呼びかけ人でもある同志社大学大学院教授で経済学者の浜矩子さんが「次の70年をどう共に生きるか~本当の積極的平和主義を目指して~」と題して講演した。
浜さんは安倍政権の安全保障政策と経済政策の関係を「アホノミクス」という用語で説明。「アホノミクスは彼らの新安保政策と完全に表裏一体。彼らが 目指しているのはアホノミクスで『富国』、憲法改正で『強兵』。この二つの道筋を通じて大日本帝国を取り戻すこと。改憲、安保強化の野望を進めやすくする ための目くらましという解釈は完全なる誤解」と強調した。
安倍政権のスタンスがアメリカ追従といわれる点について、「安倍首相は『戦後レジームからの脱却』と言ってきたが、こんにちの日米関係は戦後レジー ムそのもの。あらたな帝国主義的な展開をする差し当たりの入口として、アメリカとの関係を使っているのではないか」と指摘。安倍首相が昨年の年頭所感で 「強い日本」「強い経済」「誇りのある日本」を「取り戻す」と発言したことに触れ、「ケンカが強くてお山の大将じゃないと胸を張れない、などというのは幼 児的凶暴性に満ちた発想。誇りある存在であるためには強い存在でなければならない、こういう体系の中にアホノミクスもあり、対米従属の認識も続けられてい ることを見定める必要がある」と注意を促した。
そのうえで浜さんは「前文、第9条に集約される日本国憲法の思いこそ本当の積極的平和主義を体現している」とし、本当の積極的平和主義を実現するた めにはまず「立派なしっかりした大人であること」だと指摘した。「子供と大人の立ち居振る舞いの違いは、人の痛みがわかること。その観点から見ても『加害 の歴史と向き合う』ことは、まさに大人の姿勢。自分にとって不都合な過去に目を向けず、圧殺するのは典型的な子供じみた振る舞いだと思う」と述べた。【栗 原佳子 新聞うずみ火】