◆自衛隊の装備の修理・整備や物資の輸送に民間企業が関わる
「戦争法案」が仮に成立して、その法制度が発動された場合、海外で自衛隊や米軍の軍事活動を支援する兵站の活動に、輸送、装備の修理・整備、建設などさまざまな側面で、民間企業が関わり、労働者が業務命令を通じて「戦争協力」を迫られることになると予想されます。
それは自衛隊員だけでなく、民間人も戦争やテロに巻き込まれる危険が高まり、戦争への協力・加担を強いられることを意味します。
連載の第26回で述べたように、すでに自衛隊のイラク派遣やインド洋派遣などでも、さまざまな役務を民間企業が受注して、自衛隊の活動を支えてきた実績があります。おそらくそれらの前例を踏襲しながら、規模が拡大されていくのではないでしょうか。
2001年~10年のテロ対策特措法によるインド洋派遣では、海上自衛隊が米軍艦などへの洋上給油をしました。
04年~08年のイラク特措法によるイラク派遣では、航空自衛隊が主に米軍部隊などの空輸をし、陸上自衛隊がイラク現地での復興支援をしました。
それらの活動に際し、自衛隊は装備の修理・整備や物資の輸送などの業務に関して民間企業と契約を結び、企業の技術者・労働者が中東方面に派遣されました。
自衛隊が企業に依頼し、企業が従業員に業務命令を通じて出張させるという方式です。
各種報道によれば、イラク派遣の陸上自衛隊がクウェートとイラクのサマワ宿営地との間を、陸路で何度もコンテナ輸送をした際、日本の大手運輸企業が元請けとなり、クウェートなどの運輸業者が下請けとなって輸送しました。
そのとき日本企業からも一部の社員が自衛隊に同行するなどしてイラク入りし、現地業者との連絡業務などをおこないました。
たとえば、筆者が情報公開法にもとづいて防衛省に行政文書の開示請求をして得た、陸上自衛隊と大手運輸企業の「役務請負契約書」のひとつには、「陸上自衛隊イラク復興支援群サマーワ宿営地からのコンテナ回収輸送」と書かれています。
この役務を請け負った企業は、「日本通運株式会社」と記されています。契約金額は1億2542万3822円で、仕事の内容は2005年3月10日~4月7日に200個の空コンテナを回収輸送することとなっていました。