◆情報開示された文書から浮かび上がる民間人派遣の実態
同じように筆者は、イラク派遣に際して自衛隊装備の修理・整備に関する民間企業との契約書なども、防衛省に開示請求をしました。
その結果、計14回、のべ39人の企業の技術者がクウェートなどに派遣された事実が明らかになりました。
ただし、企業名や個人名などは不開示で黒塗りにされていて、その理由は、「企業や社員個人を標的にしたテロなどのおそれがあるため」とされていました。
それは、一連の派遣がテロの危険を伴う事実上の"戦地出張"とも呼べることを示しています。
防衛省・自衛隊も、企業も、技術者派遣の事実を公表していませんでした。筆者が情報公開請求をして、初めて明らかになったのです。事は秘密裏に運ばれていたわけです。
開示された一連の文書からは、自衛隊と企業の緊密な協力関係と、民間人派遣の実態が浮かび上がってきます。いくつかの事例をあげてみましょう。
たとえば、イラクに派遣された航空自衛隊C-130H輸送機の現地整備の役務を企業が請け負い、技術者をクウェートに派遣した事実を示す、契約書や仕様書や就業状況報告書などです。
航空自衛隊第2補給処と企業との「役務請負」契約は、2004年1月26日に結ばれていました。航空自衛隊の「イラク復興支援派遣輸送航空隊」本隊が日本を発ったのが、同年1月22日なので、契約はその直後です。
契約金額は3137万9250円。納期(役務履行期限)は同年1月26日~3月31日で、年度が変わった同年4月1日に納期を12月まで延長する契約が再び交わされ、その後、年度末まで延ばす変更契約書が作成されています。
現地整備の実施に応じて金額を確定し、契約金額のなかから作業代や経費など必要額が実際に支払われる方式です。
航空自衛隊第2補給処は岐阜県各務原市にある航空自衛隊岐阜基地に置かれ、各種装備の調達・保管・整備などを担当しています。
A4サイズで2枚の文書がまず目を引きます。「現地整備等管理要員届」と「現地整備等技術員等届」と記されています。日付は平成17年(2005年)2月22日で、某企業から航空自衛隊第2補給処長あてに提出されたものです。
某企業と書いたのは、会社名と代表者名が黒塗りにされて消されているからです。自衛隊側の書式にそって、「現地整備等管理要員届」の届け出表には、No.1から3まで管理要員の「氏名、年齢、地位・職務内容、連絡手段等、海外配置の可否」が各欄に記入されています。
しかし、要員番号と海外配置の可否(1名が可、2名が否)以外は、すべて黒く塗りつぶされています。
「現地整備等技術員等届」のほうも、1から3までの技術員等番号を除いて、「氏名、年齢、地位及び職務内容、技術員等の区分、資格・免許・特技等、技術員等としての経験(年数)」の記入内容すべてが黒塗りです。
このように自衛隊は、現地整備態勢を万全のものとするために、派遣可能な要員のリストを企業に事前に提出させて、個人情報を把握しているのです。
こうした民間企業による自衛隊への支援態勢が、自衛隊主導で築かれていることがよくわかります。 続きを読む>>