◆米軍への兵站支援すなわち戦争協力の一環に組み込まれて
イラク派遣自衛隊の装備の修理・整備などに、民間企業の技術者が派遣されていた問題で、情報公開法にもとづき防衛省から開示された一連の文書により、航空自衛隊C-130H輸送機の現地整備が、クウェートの空軍基地でおこなわれていた事実が明らかになりました。
「現地整備等指示書」(平成17年3月11日付け)という文書があります。航空自衛隊第2補給処長から某企業への指示で、「整備作業役務実施場所、 アリ・アル・サレム空軍基地」、「派遣人員及び期間、管理要員1名(平成17年3月14日~18日)、整備員3名(平成17年3月16日)」と書かれてい ます。
「現地整備等役務指示細部要求事項」という別紙が付いており、エンジン部品の損傷の点検、損傷や異常があった場合の部品交換などを、専門用語を用いて詳しく説明しています。
アリ・アル・サレム空軍基地はクウェートの基地で、イラク戦争・占領のために米軍が拠点として使用しました。
航空自衛隊は同基地を拠点に、C-130H輸送機3機が、イラクの首都バグダッド、イラク南部のタリル、北部のアルビルにある飛行場へ、武装した多国籍軍の兵員(主に米軍)と物資、国連機関の人員、人道復興支援物資、陸上自衛隊の人員と補給物資などを空輸していました。
「現地整備等指示書」にもとづき、企業は現地整備をして、「現地整備等就業状況報告書」を作成し、航空自衛隊第2補給処長に提出しています。
日付は平成17年3月22日です。それによると、現地整備を実施したのは同年3月16日、午前9時から午後6時30分まで。場所はアリ・アル・サレム空軍基地と書かれています。
管理要員1名と技術員3名が作業をしたことが記されています。企業名と管理要員・技術員の氏名は黒塗りにされて不開示になっています。
航空自衛隊の空輸活動の実績は、2004年(平成16年)3月3日の空輸開始から08年12月12日の任務終了・撤収まで、輸送回数(輸送日数)が821回、輸送人員が約4万5000人、輸送物資重量が計約673トンでした。
自民党政権のときには、防衛省・自衛隊は空輸活動の詳細を秘匿していました。情報公開法にもとづく開示請求をしても、活動内容は不開示で、文書は黒塗りにされていました。
空輸活動が実質的には米軍への兵站支援で、戦争協力にあたり、憲法9条に違反しているという批判を受けていたため、活動の実態を秘密にしておきたかったのでしょう。
しかし、09年の政権交代で民主党政権になると、情報公開の推進を主張していた同政権のもと、一転、関連文書が開示されました。
その結果、輸送した人員の約63%が武装した米兵など米軍関係者2万3703人で、自動小銃や拳銃など武器も携行していたことが明らかになったのです。
まさに米軍への兵站支援であり、戦争協力だというのが実態でした。自衛隊輸送機の民間企業による現地整備も、その戦争協力の一環に組み込まれていたのです。