◆ 自衛隊のインド洋派遣でも装備の修理に民間人が派遣されていた
2001年~10年、テロ対策特措法(後に補給支援特措法)にもとづいて、インド洋に派遣された海上自衛隊は米軍の軍艦などに洋上給油をおこないました。
自衛隊の補給艦から洋上給油を受けた米軍艦のなかには、アフガニスタン空爆やイラク戦争に参加した艦船も含まれています。補給や輸送は軍事用語では兵站といい、戦闘を支援する活動そのものであり、戦争協力にあたります。
そのインド洋派遣関連でも、自衛隊艦船の装備の修理・部品交換・点検に民間企業の技術者が派遣されていました。防衛省が情報公開した一連の文書によると、計25回、のべ77名です。
2002年7月の護衛艦「あさかぜ」の対空レーダーの回転駆動モーターの修理に、企業の技術者4名が派遣されたのをはじめ、護衛艦や補給艦の操舵装置やガスタービンなどの修理・部品交換・点検などのために派遣が繰り返されました。
防衛省は修理などをした艦船名や作業対象の装備は開示しましたが、作業を実施した場所は不開示でした。
防衛省は作業実施場所を秘密にする理由を、「これを公にした場合、テロ対策特別措置法に基づく自衛隊艦船の行動が推察され、海上自衛隊の任務の効果的な遂行に支障を及ぼすおそれがある」からだと説明しています。
作業を実施した場所は、インド洋・アラビア海・ペルシャ湾沿岸国のどこかの港だと考えられます。
企業名も不開示で、その理由を防衛省は、「当該企業を標的にしたテロなど違法な妨害活動が行われ、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある」からだと説明しています。
企業の技術者が仮に現地でテロなどの事件に巻き込まれた場合の対応や補償に関しては、「企業が契約しておこなっていることであり、事故や事件に関しては一般的に企業内の労使関係で処理すべき問題」だという見解を示しています。
つまり、防衛省・自衛隊が責任をとったり、補償したりはしないということです。その見解は自衛隊イラク派遣関連の企業の技術者派遣についても同様です。
このようにあくまでも企業との契約だと強調しています。しかし、確実な利益が得られる自衛隊装備の生産・修理・整備などを受注する防衛産業(軍需産業)の企業にとって、一大顧客である自衛隊からの契約要請を断るのはまず無理でしょう。
契約を通じてであれ、実質的には政府が民間に協力をさせる、事実上の「民間人動員」といえるのではないでしょうか。
こうした契約を通じて、海外で米軍に兵站支援すなわち戦争協力をする自衛隊への、企業による支援態勢がつくられてきました。企業の従業員は業務命令を通じて、戦争協力の一環に組み込まれていたのです。
◆ 防衛省・自衛隊と企業が一体となった秘密主義の壁