蓮池:金日成氏にも行き着く。
石丸:そうです。最高指導者の責任問題に行き着くような提案を飲むことは、今の北朝鮮の体制ではできません。そ のような案を内部検討することも誰にもできないでしょう。そんなことをすれば、担当者は最悪の政治犯とされてしまうかもしれない。だから、日本側が指導者 の責任問題に触れるような提案をすれば、北朝鮮側にしたらテーブルをひっくり返さざるを得なくなります。
ですから、拉致問題を早く前進させようとするなら、責任者の引き渡しとか処罰の件は求めない、いったん放棄することが必要になってくると思います。 事件各々の真相の究明は必要でしょうけれど、安否調査とは別に時間をかけてゆっくりでいい。言い方を代えると、真相究明の問題は次代に委ねるということで す。
さらに拉致被害者の補償に関する協議も、生存者の帰還を最優先にするなら先延ばしてもいいでしょう。被害者に対する補償、償いは当然必要ですが、今 北朝鮮側が、傷の深い拉致問題の解決に動こうとしているのは、やはり見返り、対価が欲しいからです。被害者に対する補償と見返りの収支が、トータルでプラ スになる見込みがあるから乗ってくるわけです。
「完全なる安否確認」が最優先、真相究明は相互約束して別途進行させる。そのために共同調査委員会を作り、日本の担当官が2年3年、5年北朝鮮に事 務所を作って常駐する形が望ましいと思う。それもあくまで真相究明自体を目的にして、誰かを処罰をするとかはしない、このような枠組みが2004年か05 年あたりから実行できていたら、、拉致問題はもっと早く前に進んでいたと思います。
蓮池:それができなかったわけです。
※金正日政権は、死亡と通告した拉致被害者6人のうち、松木薫さんと横田めぐみさんのものとする遺骨を日本側に 提供したが、高温で二回に渡って焼かれていたうえ粉々に砕かれており、DNA検査が困難であった。横田めぐみさんのものとされた遺骨は、帝京大学法医学研 究室と警察庁科学警察研究所で鑑定が行われ、帝京大鑑定では「横田さんものではない二人分の遺骨」という結果が出された。しかし、後に英国の科学誌「ネイ チャー」は、「遺骨は汚染されていた可能性があるためDNA鑑定では結論が出せない可能性がある」と問題提起した。
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