「必要だからという理屈だけで突っ走っているのが今の法案の内容」憲法学者で関西大学の高作正博教授は言う。(撮影・樋口元義)
「必要だからという理屈だけで突っ走っているのが今の法案の内容」憲法学者で関西大学の高作正博教授は言う。(撮影・樋口元義)

◆意図的な曲解

政府が合憲とする根拠に、「砂川判決」があります。東京都にあった米軍の立川飛行場の拡張工事が持ち上がった時に、付近の住民や学生、労働者らが基 地の周辺に集まり「砂川闘争」と呼ばれる反基地闘争を繰り広げました。その一環として、勢いあまった方が基地の中に入り込んでしまい逮捕された。

日米安全保障条約の下で、地位協定というものがあり、その下に「刑事特別法」という法律がありまして、その中に基地の中に許可なく入ると刑事罰になるという規定があるのです。砂川事件は、勝手に入った人に対する刑事裁判が発端になりまして、憲法論争に発展しました。

砂川裁判の判決から明らかなのは、「日本の防衛のために他国に駐留させることが9条に違反しないか」という問題です。この事案の特質から浮かび上が るのは、最初から最後まで個別的自衛権の問題です。つまり、日本の防衛のために外国の軍隊を駐留させることが問題になりましたから、日本をどうやって守る かという問題になります。従って、議論の土俵は個別的自衛権しか争点になっていません。

ところが、この砂川事件の判決の一節を取り上げ、安保法制懇の中でこういった指摘がなされておりました。

この砂川判決が「我が国が持つ固有の自衛権」という言葉を使っており、自衛権の言葉自体は容認しているわけです。その上で、自衛権の中身について、 集団的自衛権と個別的自衛権を区別して論じてはいない。そのことを指して、集団的自衛権の行使を禁止していないというふうに捉えて、「だから砂川判決で は、集団的自衛権は認めていたのだ」という理屈として引っ張ってきました。これは意図的な曲解です。

砂川事件の判決は個別的自衛権の問題が争点になった事案ですから、集団的自衛権についてはいっさい触れていません。

★新着記事