石丸 韓国の情勢についてもよくご存知のようですが、どうやって情報を入手しているのですか?
キム テレビとラジオです。ラジオもデジタル時代ですから、中国と行き来する人たちがこっそり持ち帰るデジタル 小型ラジオが出回っています(周波数が固定できない)。テレビは「封印(国営メディア以外見られないようチャンネルを固定されている)」されているにもか かわらず、実は平壌でも韓国の放送がよく映るんですよ。
石丸 韓国のテレビはNTSCなのにPAL方式の北朝鮮で映るんですか?
キム 韓国が朝鮮に向けて、PAL方式でKBS(韓国放送公社)放送を発信してるんですよ。
石丸 へえ。江原道や咸鏡南道でもKBSを見ていると聞いたことがあるけれど、そういうことなんですね。
キム 世界がどう回っているのかを知るためには見ないと始まりません。朝鮮メディアの言うことばかり聞くわけにはいけませんからね。
※ 08年ごろから北朝鮮の南部地域で韓国のテレビ放送が鮮明に映るという情報を数多く聞いた。デジタルチュー ナーの中国製のポータブル型のテレビ受像機が北朝鮮で普及して韓国のテレビ放送を隠れて見る人が急増した。韓国では2012年末、地上波テレビアナログ放 送(NTSC方式)を終了し完全デジタル化(ATSC方式)されたが、それ以降もKBSで国内向けにデジタル放送されているものを、北朝鮮向けにアナログ PAL方式で送信している。
石丸 平壌では携帯電話が随分普及しましたね。何か変化を感じますか?
キム 統制は徹底してますよ。インターネットにも繋がらないし、Bluetooth機能(赤外線によるデータ移動機能)も外してしまったし、写真撮影もできなくして通話するだけにしようとしている。
平壌では突然一斉に何時間も携帯電話が使えなくなることがしょっちゅうあります。すると、「ああ、金正日、金正恩の行事がどこかであったんだな」と 平壌市民なら皆想像します。金正日、金正恩の動向の秘密保持のため、平壌の100万台の携帯電話を一切使えなくするんですよ。ひとりの人間のためにみんな が不便を被る。 (続く)
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※当記事は、『北朝鮮内部からの通信「リムジンガン」第7号』に掲載されています。