改革開放に踏み切れず経済破綻を導いた金正日時代を、「失敗した17年」と考える人が多い。朝鮮中央通信より引用
改革開放に踏み切れず経済破綻を導いた金正日時代を、「失敗した17年」と考える人が多い。朝鮮中央通信より引用

<奪われるために働く農民たちの悲惨>記事一覧

石丸 私はこれまで、北朝鮮の人と会う度に「金正日時代をどう評価するか」と質問してきました。答えのほとんどは「失敗だった」というものでした。金正日を決して批判しない人たちも、外国人の私の前で「金正日将軍は一生懸命やっている」と称賛の言葉を口にする人たちも、17年間に対する評価となると大変に厳しい言葉を口にします。同じ社会主義でも中国やベトナムは食べていけるのに、朝鮮だけはそうでない、改革開放に踏み切らず生活が苦しくなったことを、失敗だと言うのです。

キム まあ、金正日は完全に失敗、朝鮮を壊してしまいましたからね。人が死に盗賊や強盗が増え、不正腐敗が蔓延する世の中になってしまった。人民はこう表現します。「今や不正腐敗や貪官(住民から財産を搾り取る官吏)という毛虫、賄賂行為をする毛虫が、国家という木の葉っぱを食べつくして立枯れてしまった」と。一見、立っているように見える朝鮮という木も死を迎えている、というわけです。金正日が死んだとき、私は涙が出ませんでした。自分だけかと思っていたが、他にもそう人が多かった。なぜなら、受けた恩恵がないから。

石丸 若い金正恩の時代になりました。新しい変化が始まる、改革開放に向かう、そんな期待感を持っていますか?
キム 期待したいが、率直に言って実際に変化が起こるまでは何とも言えませんね。少し兆しが見えないわけではないけれど、大きな期待はしていません。自分の祖父と父が犯した過ちを正して民族を率いて行くというような、歴史に残るようなリーダーシップがすぐに発揮できるとはとても思えないからです。

朝鮮の経済の土台はとても弱いのに、上に居座って民衆を搾り取る輩ばかりが肥大しています。幹部には働く人間は少なく、奪おうとする人だけが溢れています。こうした社会構造を正そうと、金正恩になって党機関を少し縮小させようとしているのは確かなようです。

ですが、重要なのは「金正恩には本当に改革の意志があるのか」という点です。果敢に、大胆に大ナタを振るうことができるのか、それとも自身のカリスマ化を目指し、国民の不満をちょっぴりなだめる程度で終わってしまうのか。
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